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藤井寺市医師会所属の医師たちが医療関係は勿論、多種雑多な話題について語ります。
2014/08/20 2014年7月の読書ノート
(44)幕末維新の城  一坂太郎  中公新書

 日本には江戸時代200以上の城があったということですが、明治維新の動乱を経て多くの城は無くなっていきます。その理由は城が、その藩の象徴であったため、明治新政府に対する反乱の拠点になるのを恐れたため、あるいは単純にその城を維持する経費が大変だったため、など色々あるでしょう。
いずれにせよ、維新頃に多くのお城は廃城になりましたし、上手く生き残っても第二次大戦時の空襲で焼けてしまったものも、多々あります。
この本は、残っている貴重な写真を用いて幕末期の城の様子、またそれがどのように扱われてきたかを、興味深く紹介してあります。


(45)世界史の叡智 悪役・名脇役篇 木村凌二  中公新書

 世界の歴史を動かしてきたのは、世界史で教えてもらった英雄だけでなく、それを支えた権謀術策に長けた部下でしょう。この本は英雄を紹介してくれては居ますが、それ以上に影のリーダーとして、世界を動かした人たちを紹介してあります。
もともとは新聞で紹介された連載物ですが、一つ一つの紹介が短く、読んでいて正直言って欲求不満になってしまいます。
もっとその人物なり、その時代を知りたければITで当たって見られてはいかがでしょうか。


(46)ためらいの倫理学  内田樹  角川文庫

 内田先生の初期のころのエッセイを収録してあります。
原理主義というか、「善・悪」の二元論というか、そのような判断の仕方、考え方に最近の世の中は陥りがちですが、それに異議を唱えるような、言い換えれば私たちおじさんたちが、判断にためらい、逡巡するというその叡智を提案しています。
内田先生がなぜ戦争について語らないのか、性について語らないのかなどを紹介しながら、いかにして物事を考えていくのか、それを教えてくれています。
これからもこの姿勢で、わたしも物事を考えていきたいと思います


(47)日本鉄道史  老川慶喜  中公新書

 イギリスで鉄道が営業されてから40年後に、日本でも鉄道の営業が始まりました。それに至るには、外国の技術を導入する必要がありました。しかしそれと並行して日本人の技術者を養成する必要がありましたが、日本人は優秀ですぐにその面では、外国に追いついたようです。
しかし鉄道を建設する一番の原資は経済力ですから、明治の初期はその面でハンディキャップがありました。しかし経済が成長するにつけて、鉄道も発達し、日本人の生活も変化していきます。感心したのは、そのころから鉄道の発達が、大都市への人口流入を起こし、現代でいう過疎をおこすことを指摘していた人がいることです。
それはそれとして、この本はそのような草創期に活躍した人たち、政治家の鉄道に関する考えなどが紹介され、面白く読めました。


(48)「和」の食卓に似合うお酒  田崎真也  中公新書ラクレ

 ソムリエの田崎さんが、和食と合うワインや、清酒を紹介しています。酒の肴という言葉があるように、和食はお酒を引き立たせる役割も持っています。
その両者が上手くマッチングするよう、お酒やワインの種類、最適な温度などが紹介されています。しかし家庭で清酒を飲むとき、その種類は選択できません。せいぜい冷か、熱燗、ぬる燗くらいしかありませんので、難しい所です。


(49)テキヤはどこからやってくるのか?  厚香苗  光文社新書

 初詣や様々な縁日で、所謂「露天商」の人たちがやってきます。私も、この人たちがどこから来るのか、不思議に思っていました。「フーテンの寅さん」のように、日本国中を渡り歩いている人が来ているのかとも思いましたが、道明寺天満宮の初詣で見る限り、皆関西弁を話しています。結構地域密着かなとも思われます。
この本によると、関西と関東で違いはあるようですが、やはりいくつかの露天商の人たちの組合があり、その人たちが地域を決めて、商売をしているようです。ただそれらの商売のしきたりなどは、口承の部分が多く、また仲間内の言葉もあり、外部の人間にはわからないことが多そうです。
筆者は、民俗学的な立場から露天商の人たちにアプローチし、この社会の様子を詳細に観察、整理して紹介してくれています。私たちの日常社会とはやや異なった、独自の社会構造、これらが幾重にも重なって、昔の社会を作っていったのだと感じました。


(50)1949年の大東亜共栄圏   有馬哲夫   新潮新書

 太平洋戦争が終わっても、中国に侵攻した日本軍はすぐに帰国出来たわけではありません。その部隊の司令官の意向で中国共産党軍と戦うため、ほぼ強制的に残留した兵隊さんが何千人の単位でおり、絶望的な戦いを続けていました。
日本で終戦を迎えた軍人の中にも、大東亜共栄圏の成立をめざし、アメリカ、ソ連の二大勢力に対抗できる勢力を作ることを模索する人たちもいました。
日本軍が消滅したとはいえ、そこで働いていた情報関係の人たちやその資料などは、アメリカにとって有用なものばかりです。当初はリベラルだったアメリカの占領政策も、東西冷戦という現実が起こると、共産主義に対応するものになり、その姿を変えていきます。そのような政策の変換に乗りながら、大東亜共栄圏を復活させようとする政治勢力が、徐々に力を蓄えていきます。それらの流れを、正確に表したのがこの本です。実に力作だと思います。


(51)100年後の人々へ  小出裕章   集英社新書

 あの小出先生の最新の文庫本です。日本の原発政策など、完全に行き詰っています。しかしそれでも、安部政権は原発の再稼働を進めようとしています。だれが考えても正気の沙汰だとは思えません。安部首相というのは、よほどの自信家なのか、バカなのか(おそらく後者でしょうが)と思ってしまいます。
皆さんご存知のように小出先生は、長年にわたり原発の危険性を指摘し続けてきました。それに耳を貸さず、長年にわたって対策を怠ってきた国の責任はどうなるのでしょうか。
九州電力川内発電所の再稼働は、絶対認めてはなりませんし、原発の廃止を訴えていかなければならない、そのような気持ちが強くなる本でした。


(52)違和感から始まる社会学   好井裕明   光文社新書

 社会学というと、どうもそのイメージがはっきりとはしません。一体どんなところからその研究の発想が出てくるのか、とも思ってしまいます。
この本は、私たちが日常生活でふと感じる違和感、それが社会学の発想のもとになっていることを、実例を示して紹介してくれています。そういわれれば、毎日の生活の中でこのような研究の材料になりそうなことは、多くあるようにも思われました。しかしそれを学問として発展していくには、やはり勉強しなければいけないのだとも思いました。


番外篇  前田慶次  雪組  宝塚大劇場

 雪組トップコンビ 壮一帆、愛加あゆの卒業作品です。戦国時代の前田利家の甥で、天下の傾奇者と言われた前田慶次の物語です。雪組は和物を演じることの多い組ですが、今回も和物で、それなりに豪華絢爛な舞台でした。ただ私はいつも書いているように、不倫物はどうも苦手でその点ちょっと不満ですが、二人の演技を大いに楽しめました。それにしても、あゆちゃん、卒業するのは勿体ないなー。
ショウもトップの退団にふさわしい内容で、これは満足でした。


番外篇  その2  Lady Bess  梅田芸術劇場

 宝塚で私の大好きなミュージカル{エリザベート」、それと同じ脚本ミヒャエル・クンツェ、音楽シルヴェスター・リーヴァイ、演出小池修一郎のトリオで、しかも主演が花總まりさんとなれば見ないわけにはいきません。
話はイギリスのエリザベス一世の、王位につくまでの苦難の物語です。一言で言って、素晴らしい。出演している人たちの実力のすごさは勿論ですが、回り舞台の上に角度をつけた舞台を作り、それを回転させることで場面を変える(「盆が八百屋になっている」と言ったほうがツウの人には判り易い)その演出、衣装や照明の豪華さ、これらすべてが相まって最高の舞台でした。
チャンスがあれば、これは必見です。
それにしても花總まりさん、いつまでも素晴らしいトップ娘役さんだ、もっと言えばお姫様だと感じましたし、エリザベスのお母さん、アン・ブーリン役の和音美桜さんの存在がこのミュージカルを引き締めていました。


番外篇  その3  The Lost Glory  星組  宝塚大劇場

 アメリカの大恐慌直前の物語です。ギリシャからの移民の息子で、アメリカンドリームを実現させ、建設王と呼ばれた男に、これぞ男役の専科 轟悠さん、彼の部下で会社の乗っ取りをたくらむ男を、星組男役トップの柚月礼音、この二人ががっちりと組み合っています。
時代を背景に話はテンポよく進み、わき役陣も実力者ぞろいなので、安心して観劇できました。ただ、柚月さん演じる悪役(黒い役と言いますが)が、本当に黒く観終わった後ちょっとしんどくなったのは私だけでしょうか。私の大好きなミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」でも彼女は革命に殉じる公安委員を演じたのですが(これも真っ黒の役です)観終わった後、軽い爽快感がありました。あのような役回りのほうが、宝塚ファンとしては救われたような気がします。


白 江 医 院 白江 淳郎

2014/07/20 2014年6月の読書ノート
(36)日本ウイスキー世界一への道 嶋谷幸雄 輿水精一  集英社新書

 日本のウイスキーの美味しさは世界の五本の指に入り、色々な大会で優勝しているということです。アイルランドのシングルモルトのウイスキーの飲み比べをしたいなどと、そうお酒も飲めないのに思っていた私は、日本のウイスキーもそんなに飲んだことがないことに気づきました。
 父がサントリーのダルマや角を晩酌に飲んでいた記憶はありますが、私が小学生のころの話です。
 しかしこの本を読んで、おいしいと言われている日本のウイスキーを、ストレートで飲んでみたいという気持ちになりました。
 日本のウイスキーは何種類かの樽で熟成されたものをブレンドし、作られています。どの樽のウイスキーをどの位調合するかは、ブレンダーの腕の見せ所です。そのチーフブレンダーの輿水さんの語る話も面白いものでした。


(37)「闇学」入門  中野純  集英社新書

 昔は今のように照明が発達していなかったので、夜の闇はすぐ近くにあるものでした。暗いと聞くと、怖い、不気味などという言葉がすぐに思い浮かびますが、昔の人たちはその闇と共存していました。
 昔から盛んだった富士登山、これも夜の間に登山し、ご来光を仰ぐというのが定番ですから、当然闇の中の行動になります。山伏の人たちの修行も夜に行われることが多く、夜という闇(死)の世界から、修行が成就し朝になり生まれ変わるという意味合いもあったようです。
 このように日本人の生活は、闇と切っても切れない関係にありました。しかし最近は日本は光の洪水で、夜中で人通りが全くない道でも、煌々と街灯がついています。不必要に電気を浪費することに抵抗を感じなくなった、原発という手段を使っても平気になった、日本文化の変貌があるのでしょう。
 筆者は「闇」の復権を提唱しています。もっともなことだと思いますし、子孫に立派な国土を残すために、もう一度私たちの周りに闇を復活させるべきだと思いました。


(38)悪の出世学  中川右介  幻冬舎新書

 ヒトラー、スターリン、毛沢東、この人たちは現在の評価では悪人です。しかし一旦はその国の最高指導者として、国民の支持を得ていました。しかし特別すぐれた能力を持っていたとか、天才だったという評価は聞きません。ではどのようにして彼らはその地位を手に入れたのか、それを分析していったのが、この本です。
 彼らが上昇していった原因は、実力以上に自分の価値をアピールした、政敵を上手に葬った、反対勢力を上手く排除した、これらに尽きるでしょう。そうすることができたのも、ある種才能でしょうが。
 今日の日本でも、自分に都合の良い思い込みで、国民を戦争に引っ張っていく、低能の政治家が大きな顔をしていますが、彼も後世この悪人の中に入れられるでしょう。彼の党に投票した人、その政党に下駄の雪のように、踏みつけられてもついて行っている政党に投票した人は、どうぞ子供や孫たちに責任をとってください。


(39)鉄道会社の経営  佐藤信之  中公新書

 大都市では鉄道を利用したほうが、時間的にもはるかに有利なこともあり、私はもっぱら鉄道を利用しています。しかし地方に行くと利用者が減り、それによって列車の本数が減り、なおさら利用者が減るという、マイナスのスパイラルが起こっています。このように鉄道会社の経営というのは、なかなかに難しいものですが、それをどのような経営戦略によって対処しているのかを、詳細に紹介してあります。
 鉄道本体だけで利潤を上げるために、路線を増やしたり、複線化工事をしたりということでは、限界があります。そのため観光に活路を見出す経営(私の好きな宝塚歌劇もその一つでしょう)、沿線の宅地開発、ターミナルなどでの商業施設の開発等々様々な努力を鉄道会社は行っています。
 環境問題がいろいろ言われていますが、大量輸送手段としての鉄道の重要性は見逃すことができません。その経営も大変だと感じました。


(40)なぜ男は女より早く死ぬか  若原正巳  SB新書

 男性の精子は実に小さな細胞ですが、それに比べて卵子は大きな力強い細胞です。そのあたりを見ても、男の種としての弱さがわかります。なぜこのようなメカニズムが出来てきたのか、それを実に判り易く面白く紹介してあります。
 筆者は長年、北海道大学で遺伝子の教育、研究をされてきたそうですが、最先端の知識を知ることが出来ました。


(41)若者よ、マルクスを読もう  内田樹、石川康宏   角川ソフィア文庫

 初っ端からおっさんの繰り言になりますが、私たちの高校生、大学生のころは、マルクスやエンゲルス、その他所謂思想家の本を読んで討論する、それが当たり前の事でした。勿論マルクスやエンゲルスの本は、そもそもその訳が小林秀雄先生の本より難解で、一行読んで理解した気持ちになるのに数分かかる、という感じでした。
 しかしそれは一人前の大人になるための、通過儀礼のように思っていました。しかし最近の若者は、(私の子供たちを見ても)全くそのようなものには興味が無いようで、正直言ってマルクスの名前も知らないのではないかと、危惧してしまいます。
 この本は、内田さん、石川さんという神戸女学院大学の同僚の教授が、マルクスについて往復書簡という形で、論じています。この本で話し合われているのは、「共産党宣言」、「ユダヤ人問題に寄せて」、「ヘーゲル法哲学批判序説」、「経済学・哲学草稿」、「ドイツ・イデオロギー」という若い時代の著書についてですが、お二人が平易に解説してくれているので、判り易く読めました。どの本も苦労して読んだ記憶があるので、40年以上前にこんな本があったらよかったのに、と思いました。
 マルクスが唱えた主義、主張は現代に合わなくなっているものもありますが、彼の社会の見方物事に対する考え方は、永遠に不滅だと思いました。


(42)日本人は100メートル9秒台で走れるか 深代千之  祥伝社新書

 100メートル競走は陸上競技の一番の花です。ボルトをはじめとするアフリカ系の選手に記録は独占されていますが、アフリカ系の選手以外では、最近では日本人が一番良い記録を持っています。
 その原因の一つに、筆者らが走りに科学的分析を持ち込み、それをもとにコーチが指導していくことが挙げられます。この学問はバイオメカニクスと呼ばれるものですが、それが着々と成果を上げていることが紹介されています。面白い内容で、日本の陸上競技に期待を持てるようになりました。


(43)絶望の裁判所   瀬木比呂志  講談社現代新書

 裁判官というと、国家権力に縛られず自分の良心に基づいて正義のために、公平な判断を下す人、というイメージがあります。また私たちはそのような人物に判決を下してもらうことを、希望しています。
 しかし最近の裁判を見ていると、いわゆる司法判断を避ける傾向が、多々見られます。また国民感情から言って、大飯原子炉の再稼働など認められるわけがありませんが、そのように判断し判決を下したことが、あたかも画期的な勇気のあることのように受け取られています。
 このような私たちの裁判官に対する期待と、現実の乖離がなぜ起こっているのか、それを告発?した本です。
 裁判官の世界は、実に細かなヒエラルキーに分けられているようで、その中で3000名弱の人たちが仕事をしています。だれがどのように権力を持つか、また微妙な位置関係の違いなどに押しつぶされそうになりながら、仕事をしているという現実があります。しかも裁判官の皆さんは、司法試験に合格したエリートというプライドがありますので、何かがあった時に立ち直るのは大変なようです。
 そのようなものに束縛されながら、仕事をすることで十分な判断をすることができるのでしょうか。ただでさえ、このような戦争をする、憲法をないがしろにする国家になってしまったわけですから、これからどんなことが起こるのか、考えるだけでも恐ろしいと思います。

白 江 医 院 白江 淳郎

2014/06/20 2014年5月の読書ノート
(29)絵の教室  安野光男  中公新書

 絵を見ることは好きで、この連休中も神戸や京都の絵画展に足を運びました。いつも感心するのは、一見写実的に見える絵でも、そこに作者独自の視点が的確に表現されていることです。
この本は、基礎的なデッサン力の重要性は当然として、そこにどのような考えを塗りこめていくか、ということを話してくれていると感じました。ゴッホを例にとると、短期間に同じ対象で(ひまわりや自画像のように)何作も描き、その各々が少しずつ違っています。たとえて言えば、昔の物語にあるように、ダンスの好きな子が赤い靴を履き、その靴を履いている間は何者かに取りつかれたように踊り続ける、それと同じことが画家の中に起こっているようです。その彼を突き上げる情熱、そのほとばしりが絵画だ、ということを安野さんは強調したかったのでしょう。
それにしても、安野さんのように絵がかけたら楽しいだろうなと、うらやましく思いました。


(30)一神教と国家  内田樹 中田考  集英社新書

 私はイスラム教、キリスト教、ユダヤ教、これらはみな一神教で同じルーツから出てきた、という位のとらえ方をしていました。しかしこの本を読んで、その三者の違いがよく判るように思いました。(説明は難しいですが)
イスラム教というと、テロのこともあり、なんだかわけの判らない宗教のようなイメージがありますが、もともと国境を持たない砂漠の民が、過酷な自然の中生きる手段、規律として持ち続けた宗教ととらえれば、よく理解できると思います。その理解に立てば、近代の資本主義国家が、イスラムの国をその価値観で判断することなど、全くナンセンスだということがわかりました。
中田さんは日本のイスラム学の第一人者で、イスラム社会を今日の国境に分けられた国ではなく、以前あったカリフが指導する地域にすべきだと主張されていますが、この本を読むとその主張がよく理解できました。


(31)資本主義の終焉と歴史の危機  水野和夫  集英社新書

 どう考えても今の新自由主義が正しいはずはありません。その考えに立つアベノミクスなど、上手く行くはずはないでしょう。だれもがこのような考えや、漠然とした不安を持っていると思います。それに対する明確な答えが、この本です。
日本国内の人件費が高いということで、企業は中国などに工場を移転しました。しかし中国も豊かになり人件費などが高くなると、また別の国にその活路を見出すようになるでしょう。しかし結果は同じで、その国もそこそこ豊かになり、安い労働力などは存在しなくなります。その結果生まれるのは、世界各国での安い買いたたかれる労働力、つまり非正規の労働者です。
皆さんもご存じのように、日本でも非正規雇用労働者は増加し続けています。これが続けばアメリカと同じような、一部の少数の富裕層と、圧倒的多数の富裕層を支える貧困層という社会構造が生まれます。いや現実に生まれています。それが現在の資本主義の行き着くところです。
筆者はこのような社会の到来に対し、警告を鳴らし続けています。バブルを作り出そうとしている、アベノミクスに期待して浮かれている、または成長神話の信者の皆さんはぜひこの本を読むべきです。
これから経済成長などはない物だと腹をくくった時から、新しい日本の経済活動が見えてくると思います。


(32)戦争のできる国へ 安倍政権の正体  斎藤貴男  朝日新書

 私は安倍晋三というのは、かなり歪んだ信念を持っているか全くのバカかと思っていましたが、最近の様子を見ているとやはりその考えは間違いではなかったようです。こんな人物に、私たちの子孫の生命を委ねるわけにはいきません。その考えを強く持たせてくれる本ですし、またその反面、日本人の知性の最近の劣化を思い知らされる本でもあります。
政治家もなぜもっと謙虚に歴史を見つめないのでしょうか。首相も首相なら、子分も子分です。
斎藤さんの本は、どの本もしっかりとした主義主張が貫かれています。私たちの世代の知性とは、彼が主張しているようなものだったのに、と思います。
今年これまで読んだ本の中で、考え方ではベストの本です。


(33)10日もあれば世界一周  吉田友和  光文社新書

 最近は航空会社がアレイアンスと言われるグループを作り、連携の強化を図っています。そのおかげでいろいろな国の航空会社を乗り継いで、10日間で世界一周をした記録です。10日というと会社に勤めている人も、上手く計画すれば捻出するのに不可能な日数ではありません。
台湾、タイ、インド、エチオピア、フランス、ポルトガル、アメリカこれらの国を筆者は、時には半日のみの滞在や長くて2泊の滞在で回ります。これだけ聞くと慌しく、走りまくっているように感じますが、行きたいところを絞り切って計画を立てたため、十便余裕がある旅行のように感じました。
しかしこのようなある意味無謀な旅行をしない限り、エチオピアへは行かないだろうと思いました。


(34)ホテルに騙されるな  瀧澤信秋  光文社新書

 大阪でも高級な新しいホテルが沢山出来、ホテル戦争とも言われています。高級ホテルと言われているそれらのホテルも、いわゆるパック料金で宿泊すると、驚くほど安いことがあります。一体これらのカラクリはどうなっているのかと、興味のあるところです。
私が東京に行くとき、神田駿河台の山の上ホテルが好きで、利用することがあります。このホテルの本館は実に落ち着いた雰囲気で居心地もよいのですが、新館は本館の雰囲気はあるものの、どうも何か違う感じがしていました。私と同じ考えの方も多かったのか、人気がなかったのか新館は閉館することになり、これからは本館をより充実したものにしていくようですが、ここらあたりもホテル経営の難しさがあるように感じました。
旅行をすることもそうないので、この本が大いに役に立つということもないかもしれませんが、ホテル経営の裏側が読み取れて、面白い本でした。


(35)原発敗戦  船橋洋一  文春新書

 最近朝日新聞で連載された、福島第一原発の吉田昌郎の証言、これを読んで戦慄を覚えない人はないと思います。極言を許していただくなら、日本を救ったのは、逃げずに体を張って闘った彼ら現場の人たちだともいえます。
しかしこれは美談で済ませて良いものではありません。あの愚かな戦争を経験した同じ国の人間が、また同じ間違いを犯してしまったのです。吉田昌郎は(彼は私の中学、高校の2年後輩です)戦争で亡くなった英雄のように扱われかねません。
日本は、また日本人は原発や太平洋戦争を見る限り、何の反省もせず、それゆえなんら進歩もしていません。おそらくアベノミクス、東京オリンピックなどと言って燥ぎまくっている人たちは、また同じ道を歩んで行くでしょう。
それらの反省に立って、謙虚に歴史に学び、子孫にこの国を伝えていくべきです。そのことをこの本を読んで強く考えました。


番外篇  ベルサイユのバラ  宝塚大劇場  宙組

 100周年のお祝いでやってしまえという感じで、これでもかと上演されています。今回は男装の騎士「オスカル編」です。
「アンドレとオスカル」、「フェルゼンとマリー アントワネット」と主役を変えてベルバラは公演されていますが、今回のものが一番すっきりとして判り易いと思います。いつも書いていますが、私はベルバラがもう一つ得意ではありませんが、まあ、これならという風に思いました。


番外篇  かもめ  宝塚バウホール  星組

 星組若手のホープ礼真琴君主演の、あのチェーホフの「かもめ」です。彼女の実力は多くの人が認めるところですが、彼女をサポートする出演者も実力者揃いで、見応えのある舞台でした。
しかし、ロシヤ文学は重い、暗い、名前が覚えにくい。そういうハンデ?はありましたが、観やすい作品でした。出演者の実力がものを言ったのでしょう。


白 江 医 院 白江 淳郎

2014/05/25 2014年4月の読書ノート
(20)城を攻める 城を守る  伊東潤  講談社現代新書

 北海道から九州まで、時代でいえば戦国時代から明治時代まで、日本のさまざまな地域で起こった城をめぐる戦いを紹介してあります。
私たち大阪の人間なら、大坂夏の陣などがすぐ浮かんできますが、全国各地にさまざまな城があり特に戦国時代なら、一年中戦が起こっていたような印象があります。しかしこの本を読んで感心するのは、各お城の構造の地形を利用したバリエーションです。戦国大名各自でその家流の、構築方法があったようで、その土地、その家の人々に適したように工夫されています。そういう部分を読んでいくのも面白いと思います。


(21)なぜ八幡神社が日本で一番多いのか   島田裕巳  幻冬舎新書

 私たちの周りには実に多くの神社があり、そのいわれも様々なものがあります。それを判り易く纏めてくれたのがこの本です。
古来日本独自の神様と、渡来してきた仏様また大陸の神様の思想が融合してきたのが、日本の宗教でした。そこにいろいろな家の利害関係が絡んだりして、今日の神社が生まれてきました。
初詣などで何気なくお参りしている神社ですが、全くルーツの違う所をほうぼうお参りしていたことが分かりました。


(22)辞書から消えたことわざ  時田昌瑞   角川SSC新書

 ことわざは「庶民哲学」である、と筆者は言います。私たちが社会生活を送っていくうえで必要な、様々な教訓を面白おかしく、簡潔に、印象深く教えてくれるのがことわざです。私たちも会話の中などで使うことがありますが、昔は使われていたが使われなくなったものが多くあるようです。
この本はことわざ研究家の筆者が集めた、使われなくなったことわざを、ジャンル分けして紹介してあります。
最近ならほかの言い方になっているもの、社会の様子が変わり通用しなくなったものなど、約200のことわざが紹介されています。各々が短く纏められていますので、手元に置いて薀蓄を傾けるのに適しています。


(23)西郷隆盛の首を発見した男  大野敏明   文春新書

 何ともショッキングな題の本ですが、読んでみるとなかなか面白い物でした。
西南戦争で敗れ自刃した西郷隆盛の首は、従者によって隠されました。その首を発見し、西郷隆盛は本当に亡くなったのだと宣言しない限り、日本全国の士族の反乱は治まらないでしょう。その首を発見したのが、政府軍に従軍していた石川県士族の千田登文でした。最近彼の書いた「履歴書」が発見され、それを読んでいくことで明治時代に生きた、維新では逆賊だった人たちの様子が分かります。
いわばもう一つの「坂の上の雲」です。


(24)終着駅はこうなっている  谷崎 竜  交通新聞社新書

 全国70の終着駅の様子を紹介した本です。利用者の少ない、廃線寸前のものもあり写真を見てもローカル色いっぱいの駅が紹介されています。
短くまとまって紹介してあるので、どこから読んでも入っていけます。


(25)ゴッホのひまわり全点謎解きの旅   朽木ゆり子  集英社新書

 恥ずかしい話ですが、私はゴッホは11枚ものひまわりの絵をかいていたことを、全く知りませんでした。何枚かは見たことがあったのですが、これだけ多くのひまわりを扱った作品があるとは。
この本ではそれらの作品すべてを紹介し、その絵の描かれた背景、絵その物の解説などが詳しく語られています。
どのひまわりも、様々なことにチャレンジした作品であることが分かりました。そういう目で観ると、実に力強く実物を観たくなってしまいます。


(26)神社の起源と古代朝鮮  岡屋公二  平凡社新書

 神社のご神体は様々なものがあります。三輪神社のように山自体がご神体のものや、山にある大きな岩をそのご神体にしているところもあります。
八百万の神をまつるのが古来からの日本の神道でしょうが、山や巨岩などをまつっているその奥に、古代新羅の影を筆者は指摘します。新羅から鉄をもたらした、あるいは鉄の材料などを求めて渡来した人たちの存在です。
新羅は朝鮮半島東部にあった国です。ここから日本に渡ってくるには、対馬海流を使って、山陰、北陸に来るのが効率的です。出雲大社やその周辺、福井県敦賀周辺、そのあたりに点在する神社に、古代新羅の影響を筆者は認めます。またそのあたりで製鉄を行っていた人たちは、鉄を求めて滋賀、京都、奈良に進出してきます。先ほど述べた三輪神社、葛城山山麓に多くみられる昔からの神社も、古代新羅の人たちの影響があるでしょう。
話は変わりますが、私の苗字の白江、この苗字は石川県にもあるようで、これも新羅の影響かもしれません。


(27)色彩がわかれば絵画がわかる   布施英利   光文社新書

 絵を見るのは好きですが、論理的に鑑賞したという自信はありません。構図がどうだ、などという説明はよく聞きますが、なるほどと思う位でもう一つ心に響いてきません。筆者は色彩に焦点を当て、絵画を説明しています。
ゴッホの「烏のいる麦畑」を例にとれば、黄、赤、青、緑、黒の5色を使い空間の奥行きを表しています。色に焦点を当て絵画を紹介するということは、初めて聞きました。
面白い考えだと思いました。


(28)漢文は本当につまらないのか  橋本陽介   祥伝社新書

 慶応義塾志木高校で高校3年生に行われた、漢文の授業を紹介してあります。筆者は生徒に漢文を白文でわたし、これを読ませ、解説を加えています。私も高校の時には白文である程度読めましたが、情けないことに多くのことを忘れていました。
私が高校3年生の時も、受験に対する授業は全然なく、このような授業を受けていたことを懐かしく思い出しました。
教訓じみた側面に注目すれば漢文は面白くないでしょうが、この本のようにその背景を説明されたら、興味深いものだと思います。


番外篇  宝塚をどり  月組  宝塚大劇場

 「宝塚をどり」、「明日への指針」という短いミュージカル、「花詩集100」というショウの三本立てでした。
星組がこれをすれば、どれも見応えがあったでしょうが、トップの実力差があからさまに出た作品でした。組子が可哀想に思いました。
踊りで一番揃っていて良いと思ったものが、若手の実力者3人がセンターになって踊る「よさこい」でした。知り合いでこれをもう一度観たい為に、チケットを買った人がいたほどです。


白 江 医 院 白江 淳郎

2014/04/15 2014年3月の読書ノート
(15)もうダマされないための「科学」講義  菊池誠ら 光文社新書

 科学という言葉を聞くと、論理だったゆるぎない学問のように思いますが、東北大震災や福島第一原発の事故などを見ると、何とも頼りない基礎のしっかりとしていないものではないかと思ってしまいます。
「科学」と「非科学」、言葉でいえば簡単ですが、この間のグレーゾーンは実に多彩なグラデーションがあるように思われます。しかもそれが、政治や報道でいろいろとゆがめられ、多くの国民が「科学」に対する不信感を持ったことは、3.11以後著明になったように思います。
この本は、科学的なものの考え方とはどういうものなのか、報道は科学をどうゆがめるのか、科学技術と社会とのかかわり方などを、詳しく、また判り易く解説してくれています。


(16)もうダマされないための経済学講義  若田部昌澄  光文社新書

 経済の解説につては色々な本が出ています。門外漢の私にはどれを読んでも、その通りと感心はしますが、それなら実際はどうしたらよいのか、という所でとどまってしまいます。
この本も「インセンティブ」、「トレード・オフ」、「トレード」、「マネー」の4つをキーワードに、歴史を見ながら経済を紹介してあります。それはそれで納得したのですが、この本を読んでも、現在の日本はどうなのか、アベノミクスはどうなのかが、私には判りません。
私はただただ、バブルを作り出しているだけのように思えてならないのですが。


(17)医学探偵の歴史事件簿  小長谷正明   岩波新書

 医師である筆者が歴史上の人物の病気を、文献や映像から解説しています。ツタンカーメンはなぜ多くの杖を副葬品として持っていたのか、ジャンヌ・ダルクの聞いた「神の声」とは、ケネディー大統領の腰痛の原因は、など興味深い話がたくさんあります。
一冊前に読んだ本が経済学のはなしで、正直言って消化不良の感じが残っていましたので、一気に読めました。面白い本でした。


(18)イギリス史10講   近藤和彦   岩波新書

 中学、高校の世界史で、ヨーロッパの歴史の一環としてイギリスの歴史を学習しましたが、ここまで詳しく、また興味深くイギリス史を読んだことはありませんでした。
大陸とは海峡を隔て離れた位置にある、ということで日本と対比されることの多いイギリスですが、我が国とは全く違った歴史を歩み、またそのために全く違った世界観を持って、様々なことに対処してきたことが分かります。
大学の教養課程のイギリス史の授業を受けているようで、楽しく読めました。


(19)東西「駅そば」探訪   鈴木弘毅   交通公社新書

 いつも同じ路線を駆け足で利用しているので、改まって「駅そば」のことを注目することはありませんが、天王寺や弁天町、勿論大阪駅にもその店はあります。同じようなメニューなのかと思っていましたが、この本によると各々の店でいろいろなバリエーションがあり、より安くよりおいしくなるよう工夫されているようです。
東西による違いもいろいろあり、それを写真入りで楽しく紹介してあります。


番外篇 心中・恋の大和路    雪組  シアター・ドラマシティ

 近松門左衛門の「冥途の飛脚」の宝塚版です。次回大劇場の作品で退団するトップコンビ、壮一帆、愛加あゆが熱演しました。
手を付けてはいけないお金に手を付け、遊女梅川と死を覚悟して雪山に入っていく、二人の姿、また遊女梅川の人生の切なさ。これらがひしひしと伝わってきて、涙なしでは見られない最後の場面でした。


番外篇  ラスト・タイクーン   花組   宝塚大劇場

 男役トップスター、蘭寿トムさんの卒業作品です。存在感のある、実力充分の見事なトップさんでした。作品は、花組の実力が発揮され、ショウと共に満足しました。

白 江 医 院 白江 淳郎

2014/03/02 2014年2月の読書ノート
(8)司馬遼太郎が描かなかった幕末 一坂太郎 集英社新書

司馬遼太郎さんの作品は好きで、全ての本は読んでいますし、67巻の大全集、全ての文庫本は揃えています。このブログを始める前は、一年に一回は「世に棲む日々」、「坂の上の雲」、「街道をゆく」すべてのシリーズを読んでいました。
多くの平均的司馬遼太郎ファンと同じように、高杉晋作や吉田松陰の行動に共感していました。しかしこれらの物語は、物語であってフィクションです。歴史上の事実を取捨選択して司馬遼太郎さんが私たちに話しかけてくれているのです。
この本は司馬さんが、歴史から何を取り、何をとらなかったか、それについて紹介しています。正直言って、坂本竜馬にあれほど大きな歴史的役割を与えることは、少し無理ではないかなと思っていました。感情やエモーショナルな面だけで、薩長同盟が成し遂げられるわけはありません。それらの背景をこの本は資料を駆使しながら、検証してあります。
歴史的事実と一致しないからと言って、司馬さんの作品の価値が低下することはありませ ん。しかしその事実を知ることにより、司馬さんが私たちに何を訴えたかったのかが、より理解できたように思いました。

 


(9)「常識」としての保守主義 桜田淳 新潮新書

「保守」と言うと、「反動」という言葉が私たちの世代ではすぐに浮かんできます。その「反動」はいけないが、保守政治を続けるためには、常に時代に応じた変化が必要だということが主旨のようです。
正直言って読んでいてもう一つ腑に落ちないことが多くありましたが、今の自民党政治 (安倍内閣)を担っている、石破茂が絶賛した本なのだそうです。彼ならば絶賛するような内容かとも思いましたが・・。

 


(10)臓器の時間 伊藤裕 祥伝社新書

人体のいろいろな臓器には寿命があり、それらが関連して病気をおこしたり寿命が来たりします。それら臓器の関連性、臓器の持つ特徴を生かした治療方法などを判り易く紹介してあります。
医師や医学部の学生さんは知っている事柄ですが、そこを角度を変えて紹介してありますので、結構楽しく読めました。

 


(11)ご老人は謎だらけ 佐藤眞一 光文社新書

老年行動学を専門としている筆者が、老人のいろいろな謎を解説してくれています。
老人はなぜきれやすいのか、なぜいつまでも運転したがるのか、なぜ能力が衰えても自 信があるのか等々、ふと疑問に思うことはありませんか。これから私たちが辿っていく道ですが、この説明には納得してしまいます。
今はそのような老人にはならず、自分を弁え、適当なときに一線から退いていくというように考えていますが、この本を読んだらなかなか決心できないように思ってしまいます。

 


(12)ユーミンの罪 酒井順子 講談社現代文庫

1973年からバブル崩壊に至る時代の、ユーミンのアルバムを紹介し、その時代の女性の生き方、またユーミンのその時代に対する姿勢を紹介してあります。
考えればこれらのアルバムは全て持っていますし、歌詞を観ればほとんどの詩を歌うこ とができます。私はユーミンの大ファンではありませんが、知らず知らずのうちに彼女に感化されていたようです。
演歌にあるような、「着てももらえぬセーターを、寒さこらえて編んでいる」女性など、 ユーミンの歌にはいません。筆者が書いている「ユーミンの歌とは、女の業の肯定である。」 という言葉、よく判るような気がします。それを肯定して悩みながらも、顎を前に上げて歩いている女性、そのような女性を想像してしまいます。
とは言いながら、ラグビーをずっとしていた私は「ノーサイド」が一番のお気に入りです。それと時間の輪廻を感じさせる「経る時」かな。

 


(13)絶景鉄道 地図の旅 今尾恵介 集英社新書

地図を見て鉄道の路線を探す、そうして居る内に周囲の地形が見えてきて、その景色が想像されるようになります。この本は最初に地図ありきで、それによって絶景のスポットを探すというように、構成されています。
もちろん、筆者はその絶景と思われるところに足を運ぶ鉄道マニアですが、発想が正反対なので面白く読めます。地図も、歴史をたどって様々なものが紹介され、面白く読めま した。

 


(14)睡眠のはなし 中公新書 内山真

睡眠について、多くの疑問や心配をお持ちの方は多いと思いますが、それらの疑問に答えてくれる本です。この本を読めば、私たち医師に聞かなくても、睡眠についての大方のところは、理解できると思います。
なぜ眠くなるのか、どのくらい寝ればいいのか、眠れないときにはどのようにしたら良いのか、睡眠薬を飲んでも、大きな問題はないのか。このような普段皆さんが遭遇する疑問や、不安に要領よく答えてくれています。
手元に置いておき、眠れないときなどにお読みになれば、いかがでしょうか。ちなみに 私は、この本を読んでいるときは、読み始めて数分後には眠っていました。

 


番外篇  眠らない男、ナポレオン  星組  宝塚大劇場

 宝塚100周年の始まりを飾る、ナポレオンが主人公の新作です。
脚本は小池先生、音楽はロミオとジュリエットのジェラール・プレスギュルヴィック、演じるのが今脂の乗り切った星組ということで、期待満々で観劇しました。舞台装置や衣装は豪華絢爛、出演者全員ががんばり、大いに熱い作品でした。
でもしかし、何か物足りない。大きな山がない。上手く言えませんが、ナポレオンのことはよく知っているし、その足跡をなぞってもなんかもうひとつなあという感じが残りました。

白 江 医 院 白江 淳郎

2014/02/09 2014年1月の読書ノート
(1)新自由主義の帰結   服部茂幸   岩波新書

 1%の金持ちと99%の貧困層を作る新自由主義経済、さんざん非難されても姿、形を変えて出てきます。またバブル経済など後になれば、なぜあのようなバカな熱病に沸き立っていたのか、と思うのですがそれも姿、形を変えて出てきます。
 アベノミクスなどと一部の人たちは浮かれているようですが、私から見れば少し前にバブルで浮かれ、いったん地下に隠れていた人がまた踊り出たたけのように思えてなりません。
セーフティーネットも破壊して、いずれ小泉改革でこうむった大変な目以上のものを、私たち庶民は経験すると思います。そのころには安倍首相はまたおなかが痛くなって、どこかに隠れているでしょう。
 この本はそのような暗い未来を、冷静に予想しています。来たるべき時代に向けて、是非一読されることよいと思います。しかし、年の初めから暗い話題になりました。


(2)突撃 貧乏ライター戦記   岸川真  宝島新書

 「月刊宝島」という雑誌があり、世の中のいろいろなタブーに切り込んでいくのが、そのテーマになっているようです。その記者の岸川さんがこれまでに行ってきた突撃取材を紹介してあります。
 沖縄、生活保護、福島原発などなど。その裏にあるさまざまな私たちの知らなかった問題が、明らかになっています。本来権力を監視するという目的のマスコミは、このような姿勢で取材を続けるべきだと思います。しかし大新聞社に入社し、社内のいろいろな柵に縛られている、またそれから逃れる気のない記者には、この人のような取材活動はできないだろうと思いました。
 正直言って最近の大新聞は、政府のお先棒担ぎに成り果てているように思います。ましなのは、東京新聞くらいかな。一番信用できるのは、フリーランスの記者のホームページだと、最近思うようになりました。


(3)辞書の仕事   増井 元  岩波新書

 私たちの世代は、入学祝に万年筆(パーカーやパイロット製)をもらい、学校指定の辞書で広辞苑を買うことが、概ね普通だったのではないかと思います。その広辞苑の編集を長年務めた筆者が、その仕事を紹介しています。
 辞書といっても本と同じで、商業ベースに乗せねばなりません。ページ数、大きさなど制約があります。そのためには、できるだけ内容を簡潔に表す必要があります。その苦労などを、興味深く紹介してくれています。


(4)あらすじで読むシェイクスピア全作品   河合祥一郎   祥伝社新書

 「ロミオとジュリエット」、「二人の貴公子」この二作は私は知っていますが(宝塚で上演されたので)そのほかのシェイクスピアの作品は、有名なもののおぼろげな筋は知ってはいますが、詳しくは知りません。(恥ずかしい・・・)
 そのような悩みに答えてくれる本がこの本です。シェイクスピアの全作品のあらすじと、有名なせりふを紹介してくれています。何時間もかかる物語を数ページにまとめてあるので、正直言って判りにくい所がありますが、人物の相関図などを使い、判り易くなるよう努力してあります。手元に置いておき、必要があれば見るのに好適な本だと思います。


(5)驚きのアマゾン   高野潤  平凡社新書

 アマゾンに幾たびとなく訪れている筆者が、体験したアマゾンの神秘を紹介しています。あのように広大な土地ですし、人跡未踏のところもかなりあるでしょう。そこにはまだ私たちが知らない動植物、自然現象などがあるはずです。この本ではそれらを写真で紹介してくれています。はたして正式な学名がついているのかと思うような、動物も紹介されています。
 また自然現象でも、夜中に突然響き渡る音など、私たちの持っている自然科学の力では説明できそうにない物もあるようです。
 まだまだ不思議な世界は残っているものだと、感じました。


(6)知の武装  手嶋龍一、佐藤優  新潮新書

 国際社会のいろいろな深層を知っている二人の、対談集です。
 東京オリンピックなんて一体何を考えて招致しているのだ、と腹を立てている私ですが、これが終わるまでは、中国は尖閣諸島や日本には攻め込んでこないだろう、また幾ら安倍でも、戦争を開始はしないだろうという根拠ある認識、それらはこの本を読んでいてよく判りました。


(7)維新の後始末   野口武彦   新潮新書

 明治維新が起こり、それを完成させた大久保利通が暗殺され、という10年の間に日本は大きく変貌しました。
 失業した武士をどうするか、政府の財政をどうするか、幕府の借金をどのように返済するか、どのような国家の形にするか、一つ一つをとっただけでも気が狂いそうな問題を、このころの人たちはそれこそあっという間に解決していきました。そこには、ずいぶんと乱暴なこともありましたが、どうにかこうにか近代国家が完成しました。
 そのいろいろな物語を、短くまとめて紹介してあります。ちょっと薀蓄を傾けるのに、いい本です。


番外篇  眠らない男、ナポレオン  星組  宝塚大劇場

 宝塚100周年の始まりを飾る、ナポレオンが主人公の新作です。
 脚本は小池先生、音楽はロミオとジュリエットのジェラール・プレスギュルヴィック、演じるのが今脂の乗り切った星組ということで、期待満々で観劇しました。舞台装置や衣装は豪華絢爛、出演者全員ががんばり、大いに熱い作品でした。
 でもしかし、何か物足りない。大きな山がない。上手く言えませんが、ナポレオンのことはよく知っているし、その足跡をなぞってもなんかもうひとつなあという感じが残りました。

白 江 医 院 白江 淳郎


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