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脳MRI検査でわかること

 テレビにでるような有名人や知人が脳卒中で倒れたりすると、「もしかして自分も?」と不安になって脳を調べてほしい、MRI検査をしてほしいと皆さん外来に来られます。頭重感、めまい感、ふらつき感、手や足の先の些細なしびれなどがとても気になってきます。

 脳MRIでは無症状の脳腫瘍、かくれ脳梗塞など、脳の老化の程度を診ます。脳腫瘍が見つかっても慌てる必要はありません。無症状の脳腫瘍の多くは何年もかけてゆっくりと発育するような良性腫瘍が多く、6カ月毎のMRI検査での経過観察で済むことも少なくありません。時に数センチの大きな腫瘍が見つかることがありますが、70歳以下であれば積極的な手術加療を考えた方がよいでしょう。脳の深部にぽつぽつと見えるようなかくれ脳梗塞、殆どは脳の細い血管の年齢的な動脈硬化が原因です。しかし高血圧や喫煙の習慣などで実年齢以上に進行している場合は脳卒中を生じる率が高くなります。予防に血圧管理を厳重に行って生活習慣を改め、後でお話するMRA検査の結果によっては「血液をサラサラにする薬」の服用を開始します。この「血液をさらさらにする薬」ですがむやみに服用すると脳出血を生じることもあり、専門医とよく相談することが必要です。脳の委縮そのものは加齢の変化として普通に認められます。しかし、委縮の形によっては認知症に関係し、例えばアルツハイマー型認知症は側頭葉内側の海馬という部分が特異的に委縮します。病的な物忘れに対してはその海馬の委縮の程度を計測するMRI撮影の特別な方法(VSRAD)を行い、場合によって生活指導や、時に進行を遅らせる薬を処方します。加齢による脳委縮が思いがけなく進行している場合は多少ショックですが、見た目より機能が大事、生き生きと楽しく暮らすことが脳の活性化、機能の維持に大事ですよ。

 MRI検査では同時に脳血管を調べ(MRA検査)、脳卒中の予防に威力を発揮します。脳動脈瘤という、血管の分岐部に瘤が見つかった場合は将来くも膜下出血を生じる可能性があります。破裂する可能性がほぼ無いとされる小さな場合は6カ月毎の経過観察を行うだけで良いのですが、大きさや形、経過によっては積極的に手術を行った方がよい場合があります。クモ膜下出血を生じた場合の死亡、後遺症率は50%以上ですが、破裂する前の動脈瘤の治療成績は極めて良好です。また脳動脈の狭窄が認められ、脳梗塞を生じる危険が増している場合もあります。糖尿病、高血圧症、高脂血症、喫煙、肥満などの脳卒中危険因子を持っている人は特に、MRA検査を受けられることをお勧めします。早期診断、早期の治療開始が脳卒中の発症を予防します。

田辺脳神経外科病院 田辺 英紀


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