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心房細動と脳梗塞

 心房細動とは頻脈性不整脈(脈が速くなる不整脈)の一種です。心臓の心房という部分がブルブルと痙攣したようになり、不規則に収縮する状態です。心房が不規則に震える状態つまり電気的興奮の発生が不規則になると、心房の興奮は1分間に500拍以上にもなります。心臓の電気的興奮は心房から心室に伝わるのですが、500拍の興奮がすべて心室に伝わると心室の収縮が1分間に500拍となり、心臓はポンプとしての機能を失ってしまいます。うまい具合に心房の興奮はすべて心室に伝わるわけではありません。それでも1分間に100〜150拍の興奮が不規則に心室に伝わることがあります。このため心室も不規則に収縮し、動悸・息切れ・めまい・胸の痛みや不快感などの自覚症状を生じることがあります。

 心房細動は自覚症状が発端となり、心電図検査をした結果、心房細動とわかることがあります。健診で偶然診断されるような全く自覚症状がない心房細動もあります。慢性的に心房細動がある場合は、心電図検査で容易に診断されますが、一時的に心房細動が生じる発作性心房細動の場合は、その時心房細動が生じていないと、心電図検査ではわかりません。

 心房細動であることがわかると、その原因を検出する必要があります。心房細動がある場合、甲状腺機能亢進症・心不全・貧血・高血圧・糖尿病などの基礎疾患を慢性的に患っている可能性があるからです。このような場合は基礎疾患の治療が必要になります。
不整脈というと、心臓が止まってしまうイメージがあります。不整脈と診断された時は、その不整脈が危険性のあるものか、そうでないものかの判断が大切です。われわれはその判断をするのですが、心房細動は心臓が止まってしまう危険性の高い不整脈ではありません。

 危険性の高い不整脈ではないので、自覚症状のない慢性心房細動の場合、経過観察のみで特に治療の必要がない場合があります。経過観察とは、臨床症状や、胸部レントゲン、心エコー検査、心電図、血中BNP値等をみて、心不全の兆候が出ていないか、また24時間のホルター心電図検査で1日の平均心拍数が多すぎないか(1分間に110拍以上)、少なすぎないか(1分間に40拍以下)、4秒以上心拍が止まっていることはないか等をみてゆくことをいいます。

 心房細動でおそろしいのは、心房細動が脳梗塞(脳塞栓)の原因となることです。心房が痙攣したような状態になると、心房内で血の塊(これを血栓といいます)ができやすくなります。血栓が心房内にとどまっている間は無症状ですが、突然はがれて血流にのって脳の血管にたどりつくと、血栓が脳の血管をつまらせてしまいます。この結果、脳梗塞という重大な病気を引き起こしてしまいます。

心房細動があり、それがどの程度脳梗塞発症のリスク(危険性)になっているのか評価する方法があります。CHADsスコアといいます。心不全・高血圧や糖尿病の有無、年齢、脳梗塞・一過性脳虚血の既往等を点数化して、心房細動による脳梗塞発症のリスクを判定します。点数が上がるに従って、脳梗塞のリスクは増加します。CHADsスコアが1点以上あれば、抗凝固療法を考慮します。抗凝固療法により血栓を出来にくくし、ひいては脳梗塞の発症を予防するのです。

 抗凝固療法には昔からあるワルファリンという薬を使います。ワルファリン服用中は、食物の影響・他の薬との相互作用の考慮や、血液検査による定期的な抗凝固作用の効果判定などきめ細やかな投与量のコントロールが必要です。ワルファリンは止血能を低下させて、体内での出血を生じさせる可能性のある両刃の剣であるからです。最近新しい抗凝固療法の薬が発売されました。これらの薬は、ワルファリンに比べて食物の影響がなく定期的採血も不要で用量も一定、すぐ効果が表れるという利点があります。しかしこれらの新薬も、体内で出血の危険性をもたらすことに変わりはなく、腎機能や年齢をよく考慮して投与する必要があります。

 心房細動の薬物療法や非薬物療法による治療、すなわちリズムコントロールやレートコントロール、カテーテルアブレーションによる治療等については、次の機会にお話ししたいと思います。

中本クリニック 中本康朗

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