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広汎性発達障害

 小学校の先生が「学習面や行動面で対応に苦労する」と感じている児童は、普通学級の中に約6%いる、という報告があります。このうち約1%が「広汎性発達障害」とよばれる子どもたちで、コミュニケーション能力の障害を有しています。

 原因は脳の発達のバランスの悪さにあるのですが、最近までは病気とは理解されず、「わがままな子ども」「しつけの悪い子ども」「ちょっと変わった子ども」とみられてきました。親が注意されたり、本人もいじめにあったり、「頑張って友達と仲良くしろ」と叱咤激励されることも多かったのですが、これらは本人や家族をたいへん追いつめるものでした。彼らは成長してもやはりコミュニケーション能力の低さは残り、生涯「生きにくさ」を味わい続けます。なお一時犯罪との関係で報道され危険視された不幸な時期もありましたが、現在犯罪率は決して高くないことがわかっています。

 彼らは社会の中では「ちょっと変わっている」と受け取られがちです。たとえば「サザエさん」のタラちゃんのように敬語ばかりを使っていたり、少し前言われた「KY(空気が読めない)」で無粋なことを言ったり、友達や上司など相手に応じて態度を使い分けることもできません。ユーモアのセンスもありません。また本人も自分の不器用さに悩み、でもなかなか普通にふるまえず、人を避けて孤独になってしまうのです。

 医学的には以下の3つの症状があれば「広汎性発達障害」と診断されます。@<社会性の障害>人とうまく付き合えない、人との交流を求めない。場の空気を読みながら、上手にコミュニケーションが取れない。A<意思疎通の障害>言語や表情、身振りを使って他人とうまく意思疎通が取れない。B<想像力の障害>状況に応じて他人の考えや気持ちを推し量ることができない。空想や仮定の話ができず、現実的すぎて面白みに欠ける。

 知能は高い場合も低い場合もありますが、高い人は特に高機能と呼ばれ高学歴の人の中に結構存在し(東大生の中の高機能の割合は、一般人口の中よりも高い、という報告がありました)、技術系分野などで目覚ましい活躍をしている人も多くいます。

 この「広汎性発達障害」の中心をなすものはいわゆる「自閉症」です。「自閉症」とは社会性の障害、言語発達の障害、こだわりを主な症状とし、かつて人口の0.3%いると考えられてきました。しかし今までよくわからなかった「ちょっと変わった人」が自閉症と共通の特性を持つことがわかり、今日「広汎性発達障害」という幅広い概念ができたわけです。有名な「アスペルガー障害」とはこのなかで言語の障害がないグループを指します。

 「広汎性発達障害」に対しては2005年(平成17年)にようやく『発達障害者支援法』が施行され、早期発見や早期支援の必要性が明確にされました。また障害年金、精神障害者手帳の対象ともなりました。今後は社会が彼らについて正しい認識を持ち、社会・教育・医療が協力して彼らの生活を支えていくことが強く望まれています。

ながいクリニック 長井曜子

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