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藤井寺市医師会所属の医師たちが医療関係は勿論、多種雑多な話題について語ります。
2014/01/03 2013年12月の読書ノート
(98)武家の古都「鎌倉」を歩く  日本の歴史と文化を訪ねる会  祥伝社新書

 鎌倉幕府が開かれる前から、鎌倉は歴史に登場しているようです。鎌倉幕府が成立以後は勿論多くの場面に登場してきます。しかし多くの建物などは、戦乱で延焼、破壊され現在にそのままの形で残っているものは、多くありません。 
しかし、切通しや、やぐらと呼ばれる岩に掘られた墓跡、などは残っていますし、後世になってからですが、再建立された寺院なども多く残っています。 この本はそれらを訪ねて、紹介してあります。
鎌倉と言えば、小学校の修学旅行で行った記憶しか有りませんが、この本を読むとなかなか良い所のようです。この本を参考にしながら、訪問するのもよいでしょう。
ただこの本は歴史の説明が不必要と思われるほど多く、そこが少し興味を殺がれるところです。


(99)やっぱり見た目が9割  竹内一郎  新潮新書

 「人は見た目が9割」の続編です。
人は相手を0.5秒で判断しているようで、その間にうまく受け入れてもらえるようにしなければなりません。どのようにしてその「見た目」をよくできるか、それが筆者の言う「非言語コミュニケーション」の向上です。


(100)成長から成熟へ  天野祐吉  集英社新書

 先日お亡くなりになった天野祐吉さんの、最後のメッセージです。広告に長年携わってきた筆者は、広告を通して世の中を見続けてきました。
筆者が広告業に足を踏み入れたころは高度経済成長期で、働いていろいろなものを購入しより良い(と考えられる)生活を手に入れようとしていた時期でした。広告もそのニーズに合わせて、また悪く言えばそれを煽り立てることで成り立っていました。その後日本は世界第二の経済大国などという、とんでもない思い上がりをし、バブルを経験し、デフレが続き、企業は儲かっていても私たちの生活は楽にならず、挙句の果てはアベノミクスというような賭けのような経済政策に、国民は踊らされています。
今更経済が以前のように急成長を遂げることなど考えられませんし、どのようにきれいに衰退していくのかを考えるのが、将来に対する私たちの責任だと思います。
筆者もエピローグで、「日本は一位とか二位とかを争う野暮な国じゃなくていい。別品の国であるべきだ。」と言っていますが、本当にその通りだと、感じました。


(101)エネルギーを選びなおす  小澤祥司  岩波新書

 日本の人口はこれから徐々に減っていきます。当然それにつれて使用するエネルギー量も、減少してくるはずです。エネルギーというと電力と考えがちですが、熱もエネルギー源の一つです。これらをうまく組み合わせることでこれまでよりもはるかに少ない資源で、エネルギーを作り出すことができます。
エネルギーを作ることも大事ですが、省エネルギーも考えに入れていけばより少ない自然資源の消費で済ませることができます。
筆者は外国の例も参考にして、日本のエネルギー政策のこれから進むべき道を提案してくれています。
こんなこと判り切ったことなのに、まじめに考えれば筆者の提案していることなど、今の日本では簡単に実現できそうなのに、なぜしようとしないのでしょうか。


(102)鉄道と刑法のはなし  和田俊憲  NHK出版新書

 キセル乗車から列車転覆まで、列車を取り巻く犯罪は色々とあります。明治5年に鉄道が日本で最初に開通しましたが、その3日前に鉄道に関する法律が布告されました。
鉄道は公共性が強く、ましてやその時代日本の発展と大きな関連があったので、法律による後ろ盾が必要であったことは、当然でしょう。
この本の筆者は慶応の法科大学院の教授ですが、その教員の一割近くが鉄道ファンのようで、「則鉄(のり鉄)」という言葉もあるようです。やはりどこにもその様な人たちは居るものです。
この本は鉄道で起こったさまざまな事件と、それがどのような考えで裁かれたのかを、面白く解説してあります。明治時代には、桑折に入れて送った荷物の布団を、乗務員が売りさばいた、などという今で考えればチープな犯罪もおこったようで、興味深く読みました。


(103)世界と闘う「読書術」  佐高信、佐藤優   集英社新書

 言論界の武闘派と呼ばれているらしい二人が、宗教、家族等テーマを決め対談しています。そして彼らの考えをサポートしてきた本を紹介しています。
佐藤優さんなどは、外務省のラスプーチンと呼ばれたこともあり、基本的にどのような思想背景を持っておられるのかと思っていましたが、意外と私の考え方に近いようなところがあって、びっくりしました。
この本はお二人の考えを知ることでも有用ですが、いろいろと興味深い本が1000冊も紹介され、そういう意味でも有用な本でした。


番外篇  The Merry Widow   専科 月組   シアター ドラマシティー

 約100年前に公開されたウイーンのオペレッタ。毎年ウイーンでは年末に公演されるのが、慣例になっているそうです。
ある東欧の小さな国の、貴族と田舎の娘が恋愛し結婚したいと思うのですが、身分の違いやすれ違いなどがあり、別れてしまいます。その二人が数年後に再びめぐり合うのですが、その背景にはその国の存亡の危機がありました。と、こう書いたらどのような出し物かと思われるでしょうが、心配いりません。ハッピーエンドで笑いと、どういうわけか少し涙のうちに終わりました。
美しい数多くの、どこかで聞いたことのある歌と、芸達者な出演者の素晴らしい演技で、笑いと、手拍子と、舞台と客席が一緒になった何とも温かい雰囲気とで、幸福な時間を過ごすことが出来ました。
主演の専科北翔海莉さん、最高でした。この人の舞台は歌唱力、演技力、ダンス、三拍子そろった素晴らしいものですし、何よりもあたたかい、真摯な人柄がにじみ出ています。月組の出演者も、大劇場で見るよりはるかに生き生きと演じているように、感じました。
「最近ちょっとな、」と思っている月組も、トップに立つ人が代わるだけで、こうも違うのか、と感じた次第です。
年の終わりに楽しい舞台を見ることが出来ました。(調子に乗って3回観劇しました)
みっちゃん(北翔さんのニックネーム)最高でした。

白 江 医 院 白江 淳郎

2013/12/05 2013年11月の読書ノート
(91)残酷な王と悲しみの王妃  中野京子  集英社文庫

 私の好きな、中野京子さんの著書です。
エリザベス一世と戦い、敗れ、断頭台で命を失ったメアリー・スチュアート、ヘンリー八世の王妃になり、最後は処刑されてしまうエリザベス一世の母親のアン・ブーリン、素晴らしい肖像画は多く残ってはいるものの、平凡な一生を送ったスペイン ハプスブルグ家の王妃マルガレータ・テレサなどヨーロッパの王朝の物語を、その人たちの絵画を示しながら紹介しています。
どの絵も本物は見たことがありません。しかしこの本を読んでいるとその絵の前に行ったとき、初めて見たという気はしないだろうと思います。どうせ私のことですから、この本で読んだ知識の受け売りを、得意顔でするのだろうと思いますが。


(92)はじめての憲法教室  集英社新書  水島朝穂

 早稲田大学法学部教授で、憲法学の教室を持っている筆者が行っている、ゼミナールの模様を紹介してあります。憲法の本来持っている働きは、権力者が行使する力から国民を守ることだという、当然の常識の確認からこの講座は始まります。
自衛隊と国防軍の違い、二院制は必要か、自民党が目指す人権を制限する憲法改正とは、憲法条文の読み解き方、などの内容でゼミナールは進んでいきます。
内容を読んで、このゼミの学生さんは普通の健全な、私たちの学生の時と同じような考えを持っていることに気づきました。それなりの能力があり、正しい資料を差し出されれば、判断の結果はおのずから同じものだと思われます。
それにしても、今の安倍内閣は危険すぎる政権です。経済復興のような雰囲気で登場しましたが、私たちは全くそれを実感できません。原発事故は一向に改善しない、国民を監視したり、国家機密と称して国民の知る権利を制限する、TPPで私たちが生きていくのに必要なものをアメリカに売り渡す、戦争のできる「普通の国」になろうとする、大嘘をついてオリンピックを招致し、それで不満の目くらましをする、言い出したらきりがありません。とどのつまりが、自民党の出している憲法改正案です。
内容を一読すると、全く立憲主義を理解せず、権力者(どう考えても戦前の思想を持ち続けている)の支配に都合がよいことしか書かれていません。ここで私たちがしっかりしないと、孫やひ孫たちに、笑われてしまいます。ちょうど私たちが祖父の世代の人たちに対して、なんであんな馬鹿な政治を認め、愚かな戦争に突き進んでんだと思ったの野と同じ事が起ころうとしています。、


(93)地図と愉しむ東京歴史散歩  竹内正浩  中公新書

 東京にはあまり行きませんが、行ったときには多くは神田駿河台の山の上ホテルに宿泊します。御茶ノ水の駅からホテルに行くまで、まずはなだらかな坂道を降り、次に明治大学横の急な坂道を上ります。何とも坂の多いところだな、といった印象です。
大阪で暮らす私たちにとって、上町台地はありますがそんなに各地に坂があるという印象はありません。それに比べ、東京は起伏だらけの印象があります。
江戸時代以降、大名屋敷や新政府の要人の邸宅はその高台に建てられ、それ以後歴史の波を受けながら、さまざまに変遷してきました。それらを、昔の地図と現在の地図を対比しながら紹介してあります。
この本を持ちながら、時間があれば東京を散歩しても面白いと感じました。


(94)日本全国「ローカル缶詰」  黒川勇人  講談社+α新書

 缶詰博士を自認する筆者が、全国各地のユニークな缶詰を紹介してくれています。むき蕎麦、またぎ汁、だし巻き卵、エゾバフンウニ、これらのものが缶詰になり販売されています。
しかもこれらの殆どはお取り寄せできるものですので、フラッと注文してみようという気になります。メモ欄には、ひと手間かけた調理方法も紹介してあり、けっこう面白く読めました。


(95)ダントツ技術  瀧井宏臣  祥伝社新書

 日本の企業の中で、世界シェア8割以上の製品を作っている会社が東証一部上場中149社もあることを、みなさんご存知でしたか。恥ずかしながら私は全く知りませんでした。
またそのような大企業だけでなく、中小企業でもその技術力を生かして、世界で必要とされている製品を作っている会社が、多くあります。
この本はそれらの会社の中から、4社を選び紹介してあります。これらの会社に共通している点は、目先の利益だけにとらわれず、その会社が培ってきた技術をユーザーの要求を満たすために最大限使用している、ということでしょう。
また社員を、その会社を構成する一員と、正当に認め尊重している姿勢だと思います。これらの点が、これからの企業の経営で重要なところかと思いますが、これってもともとの日本的経営方法ではなかったのか、と思ってしまいます。何がグローバルスタンダードだ、目先の利益に踊らされていては、結局企業も生き残れないのではないでしょうか。


(96)なぜ、バブルは繰り返されるか?  塚崎公義  祥伝社新書

 人間の歴史の中で、これまで大きさは様々ですが、バブル経済は繰り返し起こってきました。だれが考えても、それらから学習し再発防止の対策を行うのが当然ですが、いろいろな形で再発してきているのです。
平成バブルの時代に銀行員だった筆者は、その時代を回顧しながらこれまでに起こってきたさまざまなバブルを分析しています。ただこの本を読めば、資本主義社会が続く限り、形や大きさを変えてバブルは発生すると思われます。アベノミクスで計画的にインフレを作っていくことになっていますが、またバブルが再来し狂乱した経済になるのではないかと、心配です。


(97)人は見た目が9割  竹内一郎  新潮新書

 人に自分の考えなどを理解してもらおうと話しかけるとき、言葉でそれを理解できるのは7%と言われています。そのほかの要素は、その人の声の調子や、目つき、顔つき、仕草などがあり、それらを総合して初めて理解してもらえるのだそうです。
筆者は舞台の演出、マンガの絵の配置や書き方などを例にだし、理解してもらったり印象深く感じてもらいやすい方法を説明してくれます。
政治家のスピーチなどその典型でしょうが、私たち医師も患者さんに説明をするときに必要なことだと、感じました。


番外篇  Shall we ダンス?  雪組   宝塚大劇場

 周防監督の同名の映画作品、これはリメイクされリチャード・ギア主演のハリウッド映画にもなりましたが、それの宝塚版です。
これまで平凡に生きてきて、家庭を作りだれもが羨む幸せを手にした主人公、彼はその平凡な毎日を変えてくれる何かがあるのでは、とふと考えてしまいます。そこで通勤時に見かけるダンス教室に、迷った末飛び込むことになってしまいます。そこでいろいろな人に会うことで、ダンスの魅力だけでなく人生の奥深さを経験するようになっていく、というお話です。
主人公と雪組トップの壮一帆さんがよくマッチし、よくまとまった小粋な作品になりました。私の中では、高評価です。
この作品で今年の宝塚大劇場は終わりとなり、東京宝塚劇場ではこれが新春を飾る作品になるのですが、関東の方これは必見ですよ。
ただ私は周防さんの作品では「シコ踏んじゃった」が好きなのですが、これはいくらなんでも宝塚では、無理ですね。
最近の雪組を見て、トップが代われば組の雰囲気がこんなに変わるものか、と感心します。以前は何か、目標がはっきりしていない、芯棒がすっきりと通っていないように感じたのですが、最近は作品に恵まれているとはいえ、安心して見られます。
月組もそうならないかと、期待していますが・・・。

白 江 医 院 白江 淳郎

2013/11/20 2013年10月の読書ノート
(83)修行論  内田樹  光文社新書

 合気道の修行者?として長年稽古を続けてきた筆者が実感した、人間の生きていく能力がステップアップしていく瞬間、それを筆者は専門の哲学と関連づけて考えていきます。
 正直この本の内容を詳しく説明することは、私の能力を超えていますが、一度お読みいただければ、その内容の面白さに引き込まれていくこと、請け合いです。
 おすすめの本です。ぜひご一読を。


(84)里山資本主義  藻谷浩介  角川oneテーマ21

 現代社会は都市に機能を集約し、さまざまな活動をやり易いような社会構成になっています。そのため過疎の問題や、限界集落といったことが出現しています。
 しかしその反面、都会から田舎に生活の拠点を移す若者の数も、年々増加しているようです。若者がそのような生活を選択する背景には、都会での生活を続けているうちに、人々との関係が希薄になっていくことだけでなく、田舎での生活で、自分の存在意義を周囲の人たちとの接触で再確認できるという素晴らしい利点があるようです。
 これこそ現代社会、グローバル経済の中で自分を取り戻す、最適な方法ではないでしょうか。自分が何らかのところで、近くの人たちの役に立っていることを感じられる喜びは、何にも代えられません。
 筆者は、四国で現在実際に行われている、材木を使用しての町おこしを紹介し、地方が元気になることで、日本全体が元気になる方法を紹介しています。


(85)東海村・村長の「脱原発」論  村上達也  集英社新書

 日本で原子の光が初めて点灯されたのが、東海村でした。その村長さんが今回の福島原発の事故によって、脱原発に傾いて行きます。というよりも脱原発の考えを確信します。その考えの軌跡を紹介してあります。
 正直言って、至極当然の、全うな考えだと思いますが、この考えに反対できる人はいないでしょう。偏差値の低い首相だけが、裸の王様で調子に乗って旗を振っています。


(86)儒教とは何か  加地伸行  中公新書

 仏壇に手を合わせるとき、私は仏様に手を合わせているのではなく、一緒に生活をしていた、亡くなった祖父や祖母に話しかけています。お墓に行っても、ご先祖様や、私の乳母だった人に話しかけています。
 これはごく自然の感情だと思いますが、仏教の教えとは全く違うぞと引っかかるところがありました。しかしある勉強会で加地先生の話を聞くことがあり、やっと判りました。私たちの考えの根っこには、儒教思想があったのです。
 儒教というのは、目の前にある死と深く結びついたものだといえるでしょう。DNAやミトコンドリアというものを知らなくても、迫りくる死に直面した時、綿々と先祖から私たちが受け継いできたもの、またそれを子孫に引き継いでいく使命、それらを体系化してきたのが儒教です。
 この本を読んで、儒教を介して少なくとも私の人生に対する認識が、より分かりやすくなったように思います。


(87) 9条どうでしょう  内田樹ら  ちくま文庫

 4人の論客が、憲法9条を題材にして、憲法に対する考えを紹介しています。
 現在の憲法が、時代に合わなくなってきたのでそれを改定する、という話がきな臭く続けられていますが、憲法とは国家の暴走から国民を守り、国民のどのように守っていくかという理想を述べたものだということができます。現実に憲法を合わせるのではなく、憲法が理想としている社会を作るため、現在の生活について検討することが大事です。
 そもそも、集団的自衛権などを成立させ、アメリカと手を携えて脅威に対して世界各地で戦争する軍隊など、だれも望んでいないはずです。それが「普通の国」なのでしょうか。
 日本国憲法があり、憲法9条があったために、私たち国民が生命への脅威を受けることなく、また戦後70年近く、日本の軍事力が海外の人たちを殺すことがなかったのです。その事実は、国会のどの議論よりも重いものを持っていると思います。
 日本国憲法は、私たちが世界に誇れるものだと思います。


(88)大人のための「恐竜学」  土屋健   祥伝社新書

 図鑑などでイラストは見ますが、どうも名前は出てこないし、一体いつ何処で如何していたのか興味が尽きない、それが恐竜です。
 どの恐竜も形がグロテスクで、「環境に適応している」とはとても言いにくいように思います。しかしそれが恐竜です。一体これらは、どんな声で鳴いていたのか、どのように食物をとりえたのかなどの素朴な疑問に答えてくれる本です。


(89)落語家の通信簿   三遊亭円丈   祥伝社新書

 落語の評論をする一番確かな方法は、それを仕事にしているプロの落語家さん自身がすることだという信念で、この本は書かれています。東京の落語家さん(勿論上方もですが)はほとんど知りませんので、その人が頭に浮かんでくることはありませんが、評論の本として読めば、この筆者の理想としている芸風が、逆に見えてきて面白く読み終えました。
 しかし、これだけのことを書いたら、(またこれでだけのことを書くからには、これまでいろいろな周囲との軋轢があったでしょうが)これからも大変だろうなと、その辺が心配になりました。


(90)一冊でつかむ日本中世史   武光誠   平凡社新書

 平安遷都から桃山時代までの歴史を、判り易くまとめてあります。政治のことは勿論ですが、社会を動かしていく経済に主に焦点を当てて、説明してあります。
 歴史というのは、ただの暗記物ではなく、経済を中心として見ていけば、興味深いものだということがわかる本です。


番外篇  風と共に去りぬ  宝塚大劇場  宙組

 これまで何度も演じられてきた、宝塚版「風と共に去りぬ」です。一言で言って、まあこんなものではないでしょうか。ベルバラといい、この作品といい、昔からのものはそれなりに手堅いのでしょうが、私のように観劇を初めて10年も経たない者にとっては、なぜか学芸会のような気がしてしまいます。
 スカーレット・ピンパーネル、エリザベート、ロミオとジュリエット、アンドレア・シェニエなど、海外でロングランを記録したものは、構成やテンポもよく、その宝塚版は感激して観るのですが、「ベルバラ」、「風とも」はどうもノッテいけません。申し訳ありませんが、醒めた目で観てしまいました。
 この劇を見た後、なぜかクラーク・ゲイブルの映画を観たくなってしまいました。

白 江 医 院 白江 淳郎

2013/10/20 2013年9月の読書ノート
(75)江戸色街散歩  岩永文夫  ベスト新書

 江戸時代には吉原をはじめ、多くの色街がありました。それは幕府によって公認されたものだけではありません。江戸というのは、人口構成が実にいびつな街で、政治の中心地であったため男性の占める比率がかなり多く、そのような人を相手にする商売が盛んになりました。
 この本はそのような土地の歴史を紹介しながら、現在の街並みを紹介し、ちょっと変な趣旨ですがそこを散歩してみるときに、有用な本です。
 子供が東京の大学に進学するかもしれず、御茶ノ水周辺でマンションを探したことがあったのですが、もしそうなっておれば子供のところに行くとき、この本を持って昔のそのようなところを散歩してみても面白いと思いました。(幸いなことに大阪の大学に進学しましたので、そのようなチャンスはできませんでしたが


(76)憲法の創造力  木村草太  NHK出版新書

 私は「君が代不起立問題」、「公務員の政治的行為」、「靖国神社をはじめとする政教分離問題」など、最高裁の判決をはじめとする考えに違和感を持ってきました。それはやはり憲法をどう理解しているか、という一点に係ってくる問題だと思っています。
 筆者は、1980年生まれの新進気鋭の憲法学者です。まあいえば私の子供の世代である人が、日本国憲法に対しラディカルな立場でいてくれていることに、感激しました。改憲問題が大きな議論もおこらず、知らぬ間に進んでいます。戦争を知らず、戦後を知らず、威勢の良い言葉だけに踊らされている人達、(この中にはいい歳をした政治家も含まれますが)
一回この本を読んでみろ、と叫びたくなる本です。


(77)日本人の知らない武士道  アレキサンダー・ベネット  文春新書

 高校時代一年間の短期留学で、ニュージーランドから日本に来た筆者は、留学先の高校の部活で剣道と出会います。筆者は剣道を通して「武士道」に目覚め、本格的に武士道を学ぶため、日本に再び留学し、ますますその道を極めていきます。現在は関西大学で比較文化論の准教授として講義をしながら、武道の海外への広報などにも精力的に活動しています。
 武士道というのは、戦国時代に実際に命の遣り取りをしている状況の下で生まれました。しかしただ人を殺すための技術を教えるのではなく、その武術により自分を磨きその結果、理想のリーダーになったり人を助けることができるようになることが目的になりました。それが「術」ではなく「道」である所以でしょう。
 武士道の神髄は、「残心」にあると筆者は言います。勝負に勝った、負けたでガッツポーズをして盛り上がるのではなく、相手のことを思いやり、勝っても負けても反省し、常に次の事態に対処できるように心構えておく、それが「残心」です。そこに「道」の意味があるのでしょう。
 私の次女は、大学で弓道部に入っています。三女は別の大学でアーチェリー部に入っていますが、同じ弓を引いて撃つ競技でも、二人の話を聞くと大きな違いがあります。
 アーチェリー部の娘の話は、技術的なことが興味深いですし、弓道をしている娘の話は競技の作法がどこか茶道に似て、非常に面白いものです。先日弓道の全国大会があり、的に命中して思わず小さくガッツポーズをした、他大学の選手が失格になったことがあったそうです。まさに、武士道精神に悖る、ということでしょうか


(78)居住福祉  早川和男  岩波新書

 私たちが持っている基本的な権利のうち、健康的な住環境に住むという権利ほど軽視されているものはありません。筆者は阪神大震災の折、神戸市がそれ以前から警告されていたにもかかわらず、住民の基本的な生活環境を整備せず、「神戸株式会社」とある意味持て囃された土地開発を続けていたことを、指摘します。
 ロスアンゼルスなど、海外でも同じ規模の地震は発生しているのですが、それによる死者の数は阪神大震災とは2ケタ近く違っています。筆者はまた、阪神大震災の死亡者をさまざまな方向から分析していますが、老人、外国人、昔から残る被差別地域の死亡者が圧倒的に多く、それと住環境の劣悪さには大きな関係があるようです。
 外国では、「住居」と認めるには厳しい基準があり、その基準をパスしないと住居を建てることはできません。その基準を作ってきたのは国ではなく、地域に住む住民であり、その集合体です。日本の住宅政策は、業者と国、地方自治体が一体となり、住民の意見を取り入れることなく、金儲けの手段として推し進められてきました。
 私たちが持つ、健康で文化的な生活を営む、最も基本になるものは贅沢ではなくとも、清潔で健康的な住居です。筆者の真摯な訴えかけに、私たちは真剣に耳を傾け、当然の権利を取り返さなければなりません


(79)日本人のための世界史入門  小谷野敦  新潮新書

 高校の世界史の教科書を、読みやすくまた興味深いところを掘り下げて書いてある本です。高校2年間で、西洋史ではルネサンスまで、東洋史では受験大学に適した参考書を紹介してもらっただけという、それこそ掘り下げた歴史の授業を受けた私(達)にとっては、ざっくりと世界史を把握するのに、最適な本です。
 この本でもう一つ特筆すべきことは、参考文献が多く紹介してあることです。文献といっても、新書や文庫本などなのですが、その本を購入して読みたくなってしまいます。この参考文献を見ていると、さまざまな地域の、時代の物事を研究している人がおられることがわかります。それこそが文化だと思いました。


(80)新自由主義の帰結   服部茂幸   岩波新書

 自民党が第一党に返り咲いて、またまた新自由主義経済を信奉する人たちが政治の場にゾンビのように、恥もなく復活してきました。それをまた持ち上げるマスコミも情けない限りだと思いますが。
 かつては素晴らしいものだと持て囃されていた、新自由主義経済がなぜこのように無残な結果を迎えたかを、その経過を詳細に追いながら紹介しています。
 アベノミクスにすがって、勝手のバブルの再来を期待している人たちもいるでしょうが、一体歴史から何を勉強してきたのでしょうか。話は変わりますが、「東京にオリンピックが来る」と大喜びしている人たちがいますが、彼らの言うことは経済効果がいくら、ということばかりです。「おもてなし」などとわけの判らないことをいうより、正直に「これを機会にお金儲けをして、1%の富裕層にもう一度入り込みたい」、「もう一度バブルの時に見たいい夢を見てみたい」と言わないのでしょうか。
 この本を読んで、新自由主義を唱えていた人たちの根本には、他の特に弱者に対する無責任さがあることがよくわかりました。経済が上向いているなどといいますが、多くに人たちは全くその実感を持っていません。そう感じているのは一部の富裕層と、正社員を派遣社員に変えて儲けている一部の大企業だけです。消費税を上げて当初の言い訳であった社会保障以外に使用する、企業減税を行う、このようなことをしていてはそれこそ新自由主義経済の信奉者の思うつぼです。
 まあそのうち安部首相は、原発のあの発言などが原因で、腹痛がまた起こるでしょうが


(81)「無添加」のカラクリ  西島基弘  青春出版社

 「無添加」という言葉を聞くと、いかにも健康的な食品のような気がします。しかし実際は私たちがその言葉を十分に理解していないための、誤解が多くあるようです。この本は、その私たちが犯しがちな間違いを、紹介してくれています。
 それはそれで面白い本だったのですが、第4章の「科学的に正しい職の安全と健康を考える」という所になると、どうもピントがずれているように感じてしまいます。遺伝子組み換えやBSE問題になると、どう読んでも科学的に思えないのは、私だけでしょうか


(82)(株)貧困大国アメリカ  堤未果  岩波新書

 この人の本を読むたびに、私たちの国の行く末が非常に心配になってきます。
 自由で、民主主義が浸透していると、教わってきたアメリカですが、実際は1%の金持ちがその財力にものを言わせ、自分たちの利益になることを恥ずかしげもなく、巧妙にしかし露骨に行っている国なのです。
 リベラルな意見を持ち、弱者の味方であるように思われているオバマ大統領ですが、成立した法案のほとんどが金持ちの意見、意向を反映したものです。アメリカでは社会的弱者は補助金などを受け取ることができますが、その額は食料品の購入に充てられるくらいの額です。その食料品を安く手に入れることができるのが、大手のスーパーです。そしてスーパーはオバマや、政党に大きなお金を、政治献金として納めています。ざっくり言うと社会福祉という言葉を利用して、税金が大企業に大量に流れ出し、それが政治家に還流していくのです。このような構図は、単に政治家がよい目をするというのではなく、企業が自分に有利な法律を、政治家を抱き込むことによって容易に成立させられることでもあります。
 アメリカはこのように、政治が1%の金持ちに奉仕するように出来上がっています。そこには、心から社会的弱者を守るという姿勢は全くなく、彼らを出汁においしい汁を吸おうという考えしか見られません。TPP問題もその延長線上にあり、このような話に乗っていくと、日本という国家は消滅してしまうでしょう。


番外篇  愛と革命の詩 アンドレア・シェニエ

 フランス革命のときに、素晴らしい詩を発表し続け、ついにはギロチンにかけられた主人公の苦しみや愛情の物語です。
 オペラの作品を、宝塚向きに植田景子さんが演出したものですが、この人の作品は私たちの心に強く響いてくるものが多く、今回もその期待を裏切りませんでした。エピローグでの望海風斗さん演じるパンジュ侯爵のソロ、これを聞くだけでもこの作品を観る価値はあります。

白 江 医 院 白江 淳郎

2013/09/17 2013年8月の読書ノート
(66)日本語は「空気」が決める  石黒圭  光文社新書

 私達は自分のことを言うとき、「オレ」、「僕」、「私」等という言葉を状況によって使い分けます。診察時に症状や病気の説明をするときも、相手によって普通の丁寧語で喋るときと、子供を相手にするときなどには友達言葉で話すこともあります。
このように状況に応じて、一番自分が言いたいことを伝えやすく言葉を変えること、それを研究するのが「社会言語学」です。筆者はそれを研究しておられ、私達がほぼ無意識で使い分けている言葉使いを、論理的に分析しておられます。
英語の専門的なことはわかりませんが、日本語が外国の人達にとって難しいのは、このように状況によって使い分けがなされ、そうすることによって社会の流れが円滑になるという、長年の文化によるものだと感じました。


(67)ヒゲの日本近現代史   阿部恒久  講談社現代新書

 私はヒゲを習慣で毎日剃ってはいますが、お盆休みなどになると急に面倒くさくなり、しばらく剃るのをやめてしまいます。一週間くらい伸ばしてやろうかと思うのですが、2日位経つと、今度はヒゲの存在が鬱陶しくなり、剃ってしまうということの繰り返しです。
明治時代の軍人、政治家の写真を見ると、殆どの人がヒゲを生やしています。しかも各人各様で、中には噴飯物のようなものがあります。それが大正時代になるとヒゲのない人が多くなり、昭和の軍国主義の時代には又ヒゲが復活し、高度経済成長期にはヒゲなしが普通になり、現在はおしゃれの一環として復活してきました。
ヒゲの歴史を調べることで、その時代が期待している男性像が浮かび上がってくると思われます。その他、ヒゲをめぐる状況が変化する4つの要因が挙げられていますが、やはり女性からの目線も重要な要因のようです。


(68)欲望の美術史  宮下規久朗  光文社新書

 美術を作り出す原点の大きな部分に、欲望があります。愛欲、食欲などとすぐに(私なら)思いつくもの以外に、信仰や自分が生きていくうえで後ろ盾となる、母性への憧れなども欲望の一つでしょう。
 この本は、これらの欲望を上げながら、それらに裏打ちされたと思える有名な絵画を紹介してあります。
 ヤン・ステーンの「画家の家族」ヤーコブ・ファン・ライスダールの「ハーレム風景」などの実際に観たことのある絵画も紹介され、これまでとは別方面からの切り口で、絵画を見ることができました。


(69)脱原発を決めたドイツの挑戦  熊谷徹  角川SCC新書

 ドイツ人は元々自然を好み、地球環境にも色々と配慮してきました。緑の党の存在などは、その顕著な例でしょう。そのドイツでも原発による発電は続けられていたのですが、福島原発の事故を契機に、それまでの方針を大きく転換し、脱原発に家事を取るようになりました。
 この本はその様な方針転換に至った経緯、又それを可能にした国民性、再生可能エネルギーを主体とするこれからの方針、又その問題点などを、ドイツ在住の筆者が分り易く紹介してくれています。
 原爆、原発と大きな被害に会った私達日本人が、何故このような方針に舵を切れないのでしょうか。北朝鮮の核問題を大きな声で非難する人はいますが、世界最大の核テロを起こしているのは、福島原発の汚染水を海に垂れ流している日本です。
 このような状態なのに、自民党政府は何の対策も採ろうとはしません。戦争が出来る国にするための憲法改悪や、アメリカの経済に飲み込まれていくTPPに前のめりになっていくばかりです。
 故郷に帰れない人達が、それこそ何万人も居るという、こんな国がオリンピックを開催する資格などありません。現に多くのアーティストは日本公演をキャンセルしています。何がベストミックスだと思いませんか。日本とドイツの違いに、呆然とします。


(70)清洲会議  三谷幸喜  幻冬舎文庫

 文庫本が出版されるのが待ち遠しかった本です。
 織田信長亡き後の、織田家の党首を誰にするか、それを決定するのが清洲会議です。天下を取ろうという織田家ですから、織田家の残った人達や家臣達のさまざまな思惑が蠢きます。
 この本はその登場人物の心の動きを語らせていますが、それが現代の言葉でのつぶやきで表されています。その様にして表現されると、この清洲会議が遠い昔のことではなく、現代の物語であるように感じられます。其処は三谷さんの力でしょうが。
 今年読んだ本の中で、かなり上位にランクされる本です。映画化されるそうですから、これも必見です。


(71)平和主義とは何か  松元雅和  中公新書

 平和主義といっても、実に広い範囲があります。何をされても暴力的な手段を使わないというものから、攻撃をされる可能性があれば(こちらから主体的に攻撃はしないけれど、相手にその様な動きがあれば)攻撃することも辞さないというものまで、その各々が主張すれば、平和主義なのでしょう。
 大雑把な言い方ですが、これまで起こって来た戦争で「これは侵略戦争です」と宣言して起こったものなどありません。全て自分の国を守るという崇高な命題の本で起こされたものです。アメリカのテロとの戦いで、アフガニスタンやイラクで起こっている事を見れば、平和のための防衛戦争という言葉のむなしさを感じずにはいられません。
 この本は現代の戦争を分析することで、これから私達が実践可能な(勿論憲法に則って)平和主義を提示しています。普通に戦争が出来、アメリカのためなら世界のどこへでも国防軍を派遣できるように憲法を改悪しようとしている、自民党政府に騙されないよう、この本をじっくりと読んでください。


(72)内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ  角川oneテーマ21

 外交政策が、現首相の能力不足のせいで(副首相も酷いけれど)全く膠着している現在、一部の人達は、戦争でもしないとこれらの問題は解決しない、という雰囲気を期待しているように思えてなりません。
 それを産経などの右翼系の新聞がはやし立てるので、誰も望んでいないのに、普通の侵略できる軍隊を持ち、世界の方々へ行ってアメリカと一緒に戦えるように憲法を改悪し、という20年前なら誰もバカにして相手にしなかったことが、だんだんと既成事実になってきつつあります。
 この本はその様な流れに私達が流されないよう、この本では右翼の論客から現役のマスコミの記者、沖縄に住む新聞記者、政治家など様々な人達が今の時代に警鐘を鳴らしてくれています。
 どう贔屓目に観ても知能が低く、思想のバックボーンが「だっておじいちゃんがそう言ってたもん」という二人に、私達の子供達の未来を破壊されてはなりません。その為にはこの本をご一読され、何らかのアクションを起こしましょう。


(73)呼吸の極意  永田晟  ブルーバックス

 緊張した時に、大きく深呼吸をすると気分が落ち着きます。それもゆっくりと息を吐き出した時にその効果はあるようです。そのような経験をされた方も多いと思いますが、これは意図的にそのような呼吸をすることで、自律神経のバランスを取っているのです。
 禅やヨーガ、気功といった東洋の昔からの身体や精神をケアする方法も、多くはこの呼吸法をもとにしています。この本はそれらを紹介しながら、普段の生活の中でも出来るような呼吸法を紹介しています。


(74)漢詩100選  守屋洋  角川SSC新書

 「大人の国語力がつく」と副題に書かれています。普段ちょっとしたことで引用する言葉に、漢詩から来ている物が沢山あります。
 「歳月人を待たず」、「春眠暁を覚えず」、「人生意気に感ず」などなど。これらの言葉を状況に応じて使いこなせれば、言葉の表現力ももっと豊かになるでしょう。まあそのように実利的なものを求めなくても、読み下し文でもよいから、漢詩を声を出して読むと、なぜか心が落ち着くように思います。
 高校時代、成績は別として漢文、漢詩は好きでよく暗唱していました。何か年寄り臭い様に思われるかもしれませんが、皆さんもこの本を読んで、折に触れ音読して見られてはいかがでしょうか。きっと心豊かになるように、感じられると思います。


番外篇  ルパン  月組  宝塚大劇場

 1回観れば十分だと、観劇した方何人かが言っておられたので、一回だけの観劇でした。しかも阪神高速や中国道どれもが大渋滞で、10分くらい遅れて入場する羽目に陥ってしまいました。
 どうも話のポイントは最初の方にあったらしく、其処を見ていなかったので何か判り難い感じでした。脚本・演出は正塚先生なのですが、この先生の作品は台詞が長く、暗転を効果的に使われるのですが、結果舞台が暗く、トップの台詞回しが、声や台詞回しの悪さでわかりにくく、ついウトウトとしてしまいました。
 専科から出演されている北翔海莉さんと、現在男役トップの龍真咲さんの実力差がこれほど明らかに出てしまうと、見ていて可愛そうになり、これからの月組が心配になります。

白 江 医 院 白江 淳郎

2013/08/21 2013年7月の読書ノート
(1)短歌があるじゃないか。 穂村弘ら  角川ソフィア文庫

 メールやファックスで短歌を投稿する「猫又」という会があるのだそうですが、そこに寄せられた短歌を紹介しています。
 「きらきら」や、「草」や「人名を入れて読むこと」や「くりひろいを折り句」にして、などと課題がありそれに対し様々な、短歌が返ってきます。
 感心する句も多くありましたが、プロでない人達が短歌を作るのですから、57577のリズムは崩してはならないと思います。やはりこのリズムを崩されては、どうも読みにくいと感じてしまいました。


(2)短歌のレシピ  俵万智  新潮新書

 短歌を作るとき、よりよいものにするためのノウハウを、俵万智さんが紹介してくれています。
 感じたこと、感激したことを短歌で表現するわけですが、それをいいものにするためにはやはり、ノウハウがあるようです。その手の内を俵さんがかなり踏み込んで紹介してくれています。
 大学の医局時代、発表論文や、学会発表の原稿を教授に添削して頂くのですが、ちょっと加筆してもらうだけで、ぜんぜん違ったものになることを、経験しました。この本もその様なもので、添削前の短歌が紹介され、添削の要点が紹介され、添削した短歌が紹介されるのですが、やはり全く違ったものになっているのがわかります。
 やはりプロはすごいなと感心してしまいました。


(3)医療にたかるな  村上智彦  新潮新書

 財政破綻した夕張市、その市民病院の再建に努力した医師が、その経験を通して現在の医療を取り巻く状況や、問題点を指摘します。
 市民病院という、入院設備を持ち、多くのスタッフを抱え、という組織を再生することは正直言って大変だろうと思っていました。しかし入院施設を持たない診療所なら、再生は今の医療情勢下ではまだ可能です。筆者の努力を貶める気持ちなどさらさらありませんが、まあそんなものかなと思います。
 多くの医師は、筆者が訴えている問題を自覚しながら、どうにか黙々と頑張っているのだと思います。


(4)反・自由貿易論  中野剛志  新潮新書

 自由貿易が絶対に正しく、世界の流れがその方向に向いているかのように、マスコミや政府は発言しています。しかし現在のようにグローバル化した経済情勢で、果たして自由貿易が優れた、各国に恩恵をもたらすものか、大いに疑問です。筆者は色々な状況やそれに関する論文をあげ、この考えに対して警鐘を打ち続けています。
 私が一番理解できないことは、現憲法が占領軍により強制されたもので日本独自の憲法が必要だ、果ては国防軍設置が必要だと、声高に日本のアイデンティティー確立を叫んでいる人物が、ことTPPや日米安保に関してはアメリカの飼い犬のように、尻尾を巻いて降参してしまうのか、ということです。
 アベノミックスなどとイメージだけを振りまいていますが、正直中身や頭脳のない、空騒ぎの政権だと何故気づかないのでしょうか。
 この本はその様なバカ騒ぎ「何も憶えず、何にも忘れず」の自民党政権に対する、実に強力なカウンターパンチだ思います。
 是非ご一読を。


(5)日本の聖域  「選択」編集部   新潮文庫

 聖域といっても神様に関するものではなく、国の様々な分野での、私達に隠されている、あるいは触れようとしても触れにくい仕組みになっている物事を、この本は扱っています。
 具体的にいえば、生命保険の「総代会」、原子力安全・保安院、独立行政法人、厚労省「医系技官」など等。
 福島原発の事故以来、原子力安全・保安院の矛盾に満ちた姿を私達は知ることになりましたが、それ以前はそれを知らされることなく、長期間のうのうと生き続けてきました。私達医師にとって、わかりやすいのは厚労省の「医系技官」で、臨床経験を殆ど持たない特定の大学出身者でほぼ固めた人達が、日本の医療を捻じ曲げています。読み進めて行く内に、怒りや、この国に対する絶望感が増大して行きます。
 この本はこれら様々な組織を紹介し、その矛盾点を的確に指摘しています。元々この内容は「選択」という雑誌で掲載されていたものだそうですが、鋭い指摘で、この雑誌を講読したい気持ちになりました。


(6)東京いいまち一泊旅行   池内紀   光文社新書

 有名なドイツ文学者の筆者は、紀行文の名手でもあります。
 この本は東京在住の筆者が、東京各地を一泊旅行してその歴史や、地区の祭りなどの風習を紹介してくれています。自宅から一時間足らずでいける場所ですが、その近くで一泊することで、段訪れるのと全く違う、旅人の気分でその場所に接することが出来ます。
 東京にも、近畿と比べれば何と言うことはありませんが、歴史がありそれを訪ねる事はやはり楽しいことでしょう。何かの折に東京に行くとき、持参したい本です。


(7)歴史発見 ロンドン案内  森正人  洋泉社新書

 ロンドンはイギリスの首都、という歴史は当然持っていますが、そのもっと以前ローマ時代からの遺跡も残っています。この本は、シティーを中心にウエストエンド、庶民の町(というか下層階級の町として知られていた)イーストエンドなどをその歴史的な建造物などを、多くの写真で紹介してあります。
一度は行ってみたいロンドンですが、その時にはこの本と、もう一つの愛読書玉村豊男さんの「ロンドン旅の雑学ノート」を持って行きたいと思います。(でも、もう行ける事はないだろうなあ)


(8)ルネサンスの女たち  塩野七生   新潮文庫

 ルネサンスの時代というと、人間性が復活し人々が生き生きと生きた時代というイメージがありました。一面ではそれは正しいのですが、その裏の面では冷徹な現実主義で人々が生きた時代でもありました。
 この時代に生きた女性も、高貴な家に生まれ才能や美貌に恵まれていればそれだけ、時代の波に翻弄されるようになってしまいます。
 この本は、その時代に生きた4人の女性の人生を紹介してあります。
 夫の代わりに戦争の先頭に立って戦った女性、故国の利益のためキプロスの王と結婚し、最終的にはキプロスを故国に譲ってしまった女性などなど、数奇な人生を送った女性がこの時代にはいました。それらの女性を、塩野さんは冷静な筆で紹介しています。
 膨大な資料を駆使して、実に面白く人生を紹介してあります。


(9)なんでもカロリー換算  竹内薫、丸山篤史  PHPサイエンスワールド新書

 カロリーと聞くと、ダイエットという風に考えがちです。しかしこれは熱量、つまりエネルギーの単位ですから、食事だけでなく身の回りの様々な出来事や、はては宇宙に至るまでの運動がこれで計算できます。
 この本は勿論ダイエットについて説明してくれていますが、宇宙の運動や、爆発、燃焼、私達のする運動の動作でどれほどのエネルギーを使うかなど、普段カロリーと関連付けて考えないことなどを、面白く紹介してくれています。
 簡単な運動エネルギーなどは覚えていましたが、回転のエネルギーの公式など、とうに忘れていました。ある意味懐かしい気持ちで読みました。

白 江 医 院 白江 淳郎

2013/07/23 2013年6月の読書ノート
(1)憲法9条の軍事戦略  松竹伸幸  平凡社新書

 憲法9条の理念を守りながら、「自分の国は自分で守る」と言う立場はやはり必要だと私は考えます。つまり私達の主権は絶対に守るが、他国の主権は絶対に侵さないと言う立場です。 紛争の解決にはあくまで、言葉を尽くして取り組むと言う姿勢を、憲法9条を遵守して行うべきです。
そういう考えから、私はいつも日本は、動物に例えればヤマアラシでいるべきだと考えています。ヤマアラシはいつも単独で行動し、他の動物が襲ってくれば鋭い、大きなハリを立てて相手からの攻撃に対して自分を守りますが、反撃して相手を殺すまでの力は持っていません。「虎の威を借る狐」で、虎に守ってもらっているだけではなく、虎の使い走りになって、終には他の動物を襲うようなことがあっては、絶対にいけません。
 最近の日米関係を見ていると、そもそもアメリカの世界戦略が破綻しているのに、それに意見を差し挟むこともなく、危険な方向にわが国が向かっているように思えてなりません。それの原点にあるのが、日米安保条約だと思います。
 岸信介が考えていた日米安保と、孫の安倍が行おうとしている日米軍事同盟とは、平和や日本の自主権といった所に大きな違いがあります。「戦後日本からの脱却」等と聞こえのよいことを言っていますが、実質的にはおじいちゃんが嫌った、アメリカの属国になる方針をより加速化しているだけです。
 筆者はこの本で、私がいつも考えていた「日本ヤマアラシ化」を理論付けしてくれました。この本の帯で、内田樹先生が書いておられますが、プラグマティックな論考で、憲法9条を守っていかなくてはならないと考える私達の、強い味方になってくれました。
まだまだ早いですが、今年のベスト候補です。


(2)金融緩和の罠  藻谷浩介ら  集英社新書

 世間は「アベノミックスだ。」等と言って浮かれて居る人達もいますが、多くの国民はある意味覚めた目で、この政権の金融政策を見ているのではないでしょうか。
 これまでの政権も、色々と金融政策などを使って、景気を浮揚させようとしてきました。しかし皆さんも実感されているように、GDPなどは伸びたかもしれませんが、実際の生活は何ら潤っていません。大企業の内部留保が増大しただけで、私達の生活に何も返ってきません。
この不況の原因を探ると、実際物を積極的に購買する20〜40歳代の人口減少、将来不安に対して唯一有効な手段と思われる、お金への欲望、それらが大きいと考えられます。
 私が子供の頃、世間は購買に対する大きな欲望がありました。自家用車にしても車検の度に新車に買い換える、などということが普通に行われていました。しかし最近はそんなことはまず起こりません。自動車の品質が向上して、長期間運転しても故障など余りありませんし、まだ十分に乗れるから新車を購入しなくてもよいという気持ちに、多くの人がなっているように思います。特に私のように歳をとってくると、死ぬまでの期間を逆算して、これだけのものを持っていたら死ぬまで十分だ、などと考えてしまいます。
 このようなご時勢に、高度経済成長期のようにお金をどんどん作って、それを消費に回そうと言うような事が、できるわけがありません。以前、バブルの時代にいい夢を見た人達が、「夢よもう一度」と考えアベノミックスにしがみ付いているのでしょうが、土台無理な話だと思います。
 まさにフランス革命の頃の貴族のように「何事も覚えず、何事も忘れず」と嘲笑されることに、安倍政権はなるように思います。


(3)戦争の条件  藤原帰一  集英社新書

 今の世界は、各国が軍事力を保持しています。その理由は自分の国の安全、主権を守るためということで、そのことは至極当然のことと思われます。
 しかししその思惑や、容認できる範囲の解釈が異なった場合、戦争を選択することが起こる可能性があります。この本は藤原さんが、学生に講義をする時に出題する、設問形式で話が進んでいきます。
具体的な国名は出ませんが、私達を取り巻いている国が容易に推察されます。
 そうです、この本は一応講義形式で話が進んでいますが、内容は現在の国際政治の原理を解説したものです。勢いのよい主張をする人は多くいますが、正直言って冷静に理性的に状況を判断している意見は、少ないように思います。
 この本はその様な冷静な議論をするための、優れた参考書だと、考えました。


(4)千曲川ワインバレー 新しい農業への視点 玉村豊男  集英社新書

 千曲川を見下ろす斜面でブドウ畑を作り、その挙句自前のワイナリーを作ってしまった、玉村さんの新しい農業に対しての提案です。
 結構多くの人が、条件さえ良ければ農業をしてみたいと、考えているのではないでしょうか。筆者は地域でワイン作りを行っていますが、それを通して現在の日本農業の問題点が見えてきます。ワイン作りという、狭い範囲ですがそれを通して様々な問題が見えてきます。
 正直言って、こんな老後を送ってみたいと思ってしまいます。


(5)縮む世界でどう生き延びるか?  長谷川英祐  メディファクトリー新書

 「働かないアリに意義がある」の筆者の第二弾です。
 これまでの私達人類の社会は、その規模の拡大路線で突っ走ってきました。しかしご存知のように、日本社会は少子高齢化の時代を迎えるようになりました。一度栄えた生物が、やがて衰退していくことは生物学的に必然のことで、それに対してどのように抗っても仕方のないことです。現在の日本社会、特に安倍政権はそれが判らずどう見ても悪あがきを繰り返しています。
 それならいっそ動物の世界に目を向けて、絶対数は少ないが安定した生態系を作っている動物を参考にして、これからの私達の社会を作っていこうという趣旨の本です。
 短期間に多くの子孫を作るような種と、長い時間かけて少ない数の子孫を確実に作っていく種、これからの日本は勿論後者でしょう。それが生き残っていくためには、大量生産大量消費を目指すより、クオリティーの高い上等なものを少量作りながら、その存在価値を高めていくことが必要ということでしょう。筆者はこのことを動物社会を例に引きながら、分り易く解説してくれています。


(6)爆笑問題と考える いじめという怪物  太田光  集英社新書

 NHKで「探検バクモン」という番組が放送されていますが、(済みません、私は観たことがありません)その番組で取り上げられた、学校でのいじめ問題、それを本にしてあります。
 正直言って、最近のお笑いの多くは、いじめと紙一重、あるいはその物のように私は感じてしまいます。勿論、この本でも述べられているように、笑いの原点の一部に、他人に対する差別や、嘲りがあることは確かでしょう。
しかしそれと、学校という閉鎖された逃げ場のない特殊な社会での、人間関係は全く別のものだと考えられます。最近の小学生、中学生には逃げ場がないようです。学校での授業、クラブ、塾、どこへ行ってもメンバーが変わりません。
 その点昔は、学校から帰れば、近所の様々な年齢の人と一緒に遊んだりして、又違う世界に自分を置けました。そこにある意味救いはあったはずです。又家に帰っても、大家族で常に顔を合わせている状態でしたから、何か変化があれば、誰かが気づきました。
 その様な様々な変化が、いじめ問題の根底に有りそうです。
 いじめから不登校になった子供達が通うフリースクールが紹介されていますが、自分というものに気づいた生徒達の、生き生きとした発言に感心しました。


(7)エキゾチック・パリ案内  清岡智比古  平凡社新書

 芸術文化の都パリ、とベタな言葉で形容されることがありますが、それは一面で、パリは移民の街でもあります。ユダヤ人、アラブ人、アフリカの旧植民地からの人達、インド人や華僑、東南アジアからの人達。それらの各々の人達が多く集まって生活している地域が、パリにはあるようです。其処では、まるでその国に来たような生活が行われています。
 この本では、それらの人達の母国とフランスとの関係、その地域の歴史、それを裏打ちするような歴史的な建築遺産、さらに地域の特色を出した食堂まで紹介してあります。地図や写真も豊富で、楽しく読みながらフランスの歴史を考えさせられる本でした。


(8)縄文人に学ぶ  上田篤  新潮新書

 建築家で有名な、あの上田篤先生が何故縄文時代に関する本を書かれたのか、大変な疑問出した。
 しかしこの本を読み進めて行く内に、その疑問は解消されました。
 上田先生によると今の私達の生活習慣、住居の間取り等の起源は縄文時代にあるようです。このような、形而下のものだけでなく、母系社会を基礎とする、形而上の世界まで、現在の私達の生活の端々にいたる多くのものの起源が、縄文時代であると筆者は言います。
 正直言って私も、社会制度で残っている多くのものが、縄文時代にタイムスリップするものとは考えていませんでした。しかしご先祖の目で見れば、「こいつらは、まだ変わっていない」と思われることでしょう。
 内容としては、大いにお勧めです。


(9)ハゲに悩む  森正人  ちくま新書

 なんともショッキングな題名の本です。この題の面白さに惹かれて読み始めました。読んでみると、題とは裏腹に、社会心理学?の真面目で面白い本でした。
 昔は聡明でエリートの象徴のように考えられていた禿頭が、何時の頃からか恥ずかしいものと考えられ出しました。又「恥ずかしいもの」と認識する、そのこと一つをとっても、個人的にその様に感じて居るのか、あるいはそれほど深い理由はないけれど、社会として恥ずかしいと思うようになって居るのかで、その意味は違います。
 その様なことから、体の形態をめぐる恥ずかしさはどこから出ているのか、というテーマで話は進んでいきます。
男性型脱毛のお薬が出だして、その疾患(状態?)の方には朗報です。しかしこの薬は日本では予想通り売れたのですが、外国では期待したほどは売れなかったという話を聞いたことがあります。民族によって、禿頭に対する認識が違うからでしょう。このような傾向は、髪の毛に限らず身体の色々な所であるようで、筆者は包茎についても経験しているとのことです。
 まともに正面から向き合うことに躊躇しそうな題材に、まともに取り組んで、面白い本でした。


番外篇1  ロミオとジュリエット   星組   宝塚大劇場

 申しわけありません。再演物だと私、見くびっていました。これまで星組で梅田芸術劇場、雪組、月組で宝塚大劇場の3作品を観て来ましたが、次元が違いました。感激して、4回大劇場に足を運んでしまいました。
 3年前の星組の梅田芸術劇場版は出演者も40人位でこじんまりした感じでしたが、今回は組子全員ですから、人数は倍近くでそれだけでも迫力がありました。
 又トップコンビも一度演じたこともあるでしょうが、他の組とはものが違いました。それと良かったのが、乳母役の美城れんさん。普段は男役で、ひげをつけたりして、老け役をよくしておられるのですが、今回はうって変わってジュリエットを見守る、乳母役です。女役としての歌も上手く、聞かせところの「あの子はあなたを愛している」は最高でした。
 私は、梅田芸術劇場版の白華れみさんが演じたの乳母が、一途で儚げで好きなのですが、美城さんは、体形、貫禄とも実に乳母で(良い言い方ではないのかもしれませんが)本当に、好演でした。
 しつこいようですが、これまで観た宝塚の作品の中でも、三本の指に入る作品でした。


番外篇2 フォーエバー・ガーシュイン  花組  宝塚バウホール

 花組期待の若手男役、芹香斗亜初主演の作品です。
 アメリカの有名な作曲家、ジョージ・ガーシュインの生涯を描いた作品で、彼の歩んだ人生、愛情、苦悩が上手く表現されていました。芹香斗亜ちゃんは初主演とは思えない安定した演技で、好演でした。
 ガーシュインの兄アイラを演じた天真みちるさんも、奔放に生きた弟を一生懸命にサポートする誠実な兄という役を、実に上手く演じていました。この二人をベテランの方々も上手くサポートし、なかなか佳い作品でした。
 ガーシュインの音楽や、それを用いたショウを入れたりしたら、大劇場に十分かけられる作品のように思いました。


白 江 医 院 白江 淳郎

2013/06/10 2013年5月の読書ノート
(1)高慢と偏見  ジェイン・オースティン  ちくま文庫

 18世紀から19世紀にかかる時代の、イギリス上流社会での結婚事情、社会の慣習などが興味深く書かれていました。この本は元々有名な本ですが、BBCで放映されて、より有名になりました。
又先年宝塚星組の、私のお気に入りの涼紫央、音波みのりさんが「天使のはしご」と言う作品で演じました。この作品の印象が良かったため、原作を是非一度読んで見たいと思っていました。
家柄は、上流階級というほどではないが、地方の貴族の女5人姉妹、その次女が主人公のエリザベスです。彼女はこの時代には珍しく自分の主張主義をしっかりと持った、聡明な女性です。その彼女が、近くに引っ越してきた裕福な貴族の友人で、より裕福な貴族と知り合いになります。ただこの貴族は、色々なことに思慮深いため、とっつきにくく高慢な人物と誤解されています。一旦はけんかをして、彼からのプロポーズを断るエリザベスですが、次第に彼の真実の姿が明らかになり、引かれていきます。
まあこう書いてしまえば、ありきたりな恋愛小説のようになってしまいますが、話の展開にリズムがあり、登場人物も多彩で、古典として残ってくる面白い本だと思います。


(2)3日もあれば海外旅行  吉田友和  光文社新書

 羽田空港が24時間空港になり、夜遅くの出発や、朝早くの帰国が可能になってきました。、金曜日に夜行便で出発し、月曜日早朝帰国して会社に出社すると言う日程で海外旅行が可能になってきました。さらに格安の航空会社の参入も増えたため、これまでより安い負担で、海外旅行ができるようになりました。
機中泊も入れて3泊4日の旅行となると、東アジアやハワイあたりが思い浮かびます。海外旅行に行くとなると、もっと遠くの国に行きたい思いも浮かびますが、もう一日有給休暇を取ることで、パリやロンドン、フランクフルトなどへも行けるようです。
この本はそれらの旅行の紹介や、航空券やホテルを最近のITを使って容易に取る方法などが紹介してあります。
何時か暇になれば、海外旅行にも行ってみたいと思いますが、なかなか出来ないだろうと諦め、この本で愉しみました。


(3)ぼくは猟師になった  千松信也  新潮文庫

 京都大学を卒業し、運送会社に就職して、仕掛けのワナを使った猟師になった筆者の話です。さすが京都大学、と感心しますが、こんな自由な発想で人生を歩めたら素晴らしいと、羨ましくなりました。
筆者は、仕掛けたわなでイノシシやシカなどを捕獲します。その為には、猟場に居る動物達の習性などに熟知していなければなりません。わなにその動物がかかったとしても、止めを刺し、解体し、もらった命を長期間保存できるように調理しなければなりません。
それらの仕事を、仲間とともに短時間で行わないと、腐敗が始まったり、味が落ちたりしてしまいます。
筆者は趣味で狩猟をしているではなく、自分で肉を食べる為に狩猟しているので、ある意味真剣で、の動物と真正面から向かい合っています。無駄に生き物の命を奪っているのとは違うことが、よく理解できます。
羨ましさも含めて、面白い本でした。


(4)怒らない生き方  植西 聰  KKロングセラーズ

 怒ることは、自分の身体によくないことは判っていますし、相手を不快にすることもよく理解しているつもりです。しかし、やはり怒るときは、怒ってしまいます。それが言葉に出して表さないにしても、やはり態度に出てしまうかも知れません。
その感情をどのようにマネージメントするかを、仏教の教えを参考に、紹介してあります。怒る時にこの本の内容が、思い出せればよいのですが、お釈迦様のような存在ではない私は、思い悩むばかりです。


(5)古事記の禁忌 天皇の正体  関裕二  新潮文庫

 日本書紀と古事記は、ほぼ同じ時代に作られたにも拘らず、その立ち居地がずいぶんと異なります。かたや親百済、もう一つは親新羅という、当時では敵対関係にある両国の立場で書かれています。
筆者は以前、藤原氏は百済の王様の末裔だという意見を発表しましたが、その意見をより発展させ、其処に他の渡来人の家計も絡ませて、ダイナミックに古代の歴史を紹介しています。
ある意味、目から鱗のようなところもあり、面白く読めました。


(6)ピカソは本当に偉いのか?  西岡文彦  新潮新書

 誰でも考えることでしょうが、あのピカソの絵は本当にすごいものなのでしょうか。又、「彼の絵が高価で買い取られた」などというニュースを聞くたびに、絵の価値とは何か、わけが判らなくなってしまいます。
この本は、それらの疑問に分り易く答えてあります。
絵の先生だった父から、厳しい絵の教育を受けたピカソは、絵画のテクニックはやはり超一流のものを持っていました。初期の(私でも理解できる、まともな?)作品ではそれが理解できますが、以後の作品は先ほど述べた疑問のオンパレードです。
そこには、美術と芸術の違い、現代美術の経済的な側面、色々なものが見えてきます。この本はそれらを分り易く、解説してくれています。
ピカソの現代芸術における、存在価値などは理解できました。しかし正直言って、ピカソの絵を買って自宅で鑑賞したいとは(勿論出来ないけれど)思いません。美術館に行って、見物するものかなと思います。
私が安心できるのは、やはり印象派くらいまででしょうか。


(7)もう牛を食べても安心か  福岡伸一  文春新書

 BSE問題もやや沈静化したような雰囲気ですが、正直言って私はまだまだ危ないと思っています。この本の初版は約7年前なので、内容的にはやや古くなっていますが、筆者の訴えている内容の重要性は、変わりはありません。
BSEで死亡した牛の、骨粉を代用ミルクとして乳児期に飲んだ牛が発症した、それを禁止したから大丈夫、と言うロジックで安全宣言されましたが、それのような条件以外の牛にもこの病気は発生しています。
筆者の福岡さんは分子生物学が専門ですが、その立場で見ても安心はできないと言う意見ですし、様々な物質の体内での代謝を考えると、遺伝子組み換えの食物もやはり危険なものと、考えるべきでしょう。
この本はBSE問題を取り上げながら、身体の中のダイナミックな代謝の様子を紹介してくれています。そういう立場で呼んでみても面白い本でした。


番外篇1  「ベルサイユのばら フェルゼン篇」  雪組  宝塚大劇場

 新男役トップ、壮 一帆、娘役トップ 愛加あみのお披露目公演です。前のトップコンビが若々しさと元気さがウリだったのに比べ、落ち着きと重厚さを感じました。
話は勿論フランス革命の時代、マリー・アントワネットとその恋人であったスウェーデン貴族フェルゼンの物語です。トップが替わることで、組や出し物から受ける印象ががガラッと変わったように、感じました。


番外篇2  「Me and My Girl」  月組   梅田芸術劇場

 私が宝塚の舞台を初めて観たのは、月組瀬名じゅんさん主演のこの作品でした。これから宝塚にのめりこみだしたわけです。
それ以後、博多座(これはDVDで)で同じ月組の霧矢大夢さん、梅田芸術劇場での花組の真飛聖さん、とこのミュージカルを見てきました。
大貴族の落胤として生まれた、ロンドンの最下層の下町で育ったビルが、紆余曲折の末恋人のサリーと結婚しその貴族の家を継ぐという、ハッピーエンドで実に楽しいミュージカルです。
今回も出演者自身が、大いに愉しんでいることが感じられる楽しい舞台でした。ただ主人公のビルを演じた、トップの龍真咲さん、以前声を壊して以来どうもセリフが聞きづらく、早口でまくし立てる所が、観ていてどうもしんどい感じがしました。頑張っているのに、かわいそうでした。


白 江 医 院 白江 淳郎

2013/05/10 2013年4月の読書ノート
(1)歴史のなかの大地動乱  保立道久  岩波新書

 東北を襲ったあの大地震、それと対比されるのが平安時代におこった貞観地震津波です。この時代にはそのほかに富士山の噴火、南海・東海地震、阿蘇山噴火など多くの自然災害が起こりました。又平安京に遷都された頃には、京都で多くの地震が発生しました。現在の日本は地震活動期と言われていますが、それと同じような時代だったようです。
現代のように地球規模で研究すると言うことができなかったので、判る範囲で色々なことを類推していたようですが、その当時の天皇が自分の至らなさのために、その様な災害が起こると認識し、様々な神に祈願をしています。その様な謙虚な姿勢を支配者は持っていたようです。
地震、火山の噴火、溶岩流それらに自分達の力を超えた自然の神を発想し、ある意味真摯な態度で向き合った古代の人達の姿が窺えます。前方後円墳の形が、溶岩流から来ていると言う指摘に、驚きました。


(2)「忠臣蔵」の決算書  山本博文  新潮新書

 浅野内匠頭が刃傷事件を起こし改易になった後、藩は今で言う法人組織ですから、勤務していた人達に退職金を支払い、負債を清算し、と言う作業をしなければなりません。それら一連のことが終わった後、藩の政治を預かっていた大石内蔵助の手許には700両が残っていました。現在のお金で言うと、約8400万円ほどです。
彼はそのお金の決算書を「預置候金銀請払帳」として、残しています。これを辿っていくことで、討ち入りの背景、武士の生活状態が手に取るように判ります。
討ち入りの時には、このお金がほぼ無くなり、足りない分は大石内蔵助が自分のお金から、用立てていたようです。お金に困った生活をしていなかった上級武士達は、資金が少なくなるにつれ、現実を見て脱落していきますが、貧しい生活に比較的慣れていた下級武士たちは、「武士の一分」を貫こうと討ち入り強硬派に、収斂していきます。
多くの人達を纏め上げていく苦労は、大変なものだったでしょう。「主君の敵を討ち、自分の武士としての存在を知らしめる」と言う形而上のものと、生活、その後ろ盾となる「お金」と言う形而下のものとの両立、わかりきったことですが、大変な苦労であったことがこの本から分ります。
まさに一級の資料と言うことが出来ると思います。


(3)不要家族  土屋賢二  文春文庫

週刊文春に掲載のエッセイを纏めたものです。土屋教授は、この頃お茶の水女子大学を定年退官し、生活ががらりと変わる次期です。
内容は相変わらず、何時読んでも新鮮と言うか、代わり映えしないというかですが、一つ一つのものが面白く読めます。肩も凝らず、時間をつぶしたい人に最適の本です。
ただこの本を読んだ後で、同じシリーズの本を読み始めたのですが、どうも代わり映えがなく、急遽次の本に変更しました。


(4)関西弁で愉しむ漢詩  桃白歩実  寺子屋新書

高校時代漢文を教えていただいた先生は(後に大阪市立大学の教授になられましたが)漢詩の授業で原文を中国語で読み下し、「素晴らしいねー」と一言言ってそれで終わりでした。漢文とは要するに漢字で英語を表してあるものだと思っていた私は、中国語の発音などは判りませんが、白文で漢詩を読むのが好きでした。
この本はその漢詩を関西弁で意訳し、面白く鑑賞させてくれます。李白、陶淵明、白居易、これらの人達の詩が、関西弁で蘇ります。又単に読み下した形ではなく、心に響くようになっていますので、読み下し文と対比させてみても面白いと思いました。


(5)論より譲歩  土屋賢二  文春新書

土屋先生の今月二冊目です。どれも同じように感じてしまいますが、それなりにいつも楽しい本です。


(6)新・国富論  浜矩子  文春新書

日本はアベノミックスなどといってはしゃいでいますが、今日のようなグローバル経済になった世界で、一つの国がお金の発行量を2倍、にしたところで、そのお金が自分の国の経済だけを潤すとはとても考えられません。間違えて歩んできた、バブルへの道を歩くだけのような気がします。現に竹中平蔵のような、もう二度と人前に出てくる資格のなうような輩が、又大きな顔をして出てきています。
この様な私の単純な疑問に、実に明快な説明をしてくれている本です。筆者の浜さんは、これまで私が考えていた、あるいは感じていた稚拙な世界経済に対する疑問に、アダム・スミスの理論を用いて明快な答えを与えてくれています。
多くの人が現政権の経済政策の危うさを指摘しています。それにたいする明確な答えが、この本にはあります。


(7)本当は怖い動物の子育て  竹内久美子   新潮新書

動物が子供を作るのは、自分の遺伝子を残して行きたいためで、その種を残して行きたいなどという高尚な目的はありません。その証拠に、様々な動物には自分の遺伝子を持っていない子供を殺したり、食べたりと言うことが見られます。
この傾向は動物にだけに見られるものではなく、人間でも見られる現象のようです。アマゾンに住む文明との接触が殆どなかった人達の中にも、出産直後の子供を殺すと言う習慣があったということです。しかしこれは、彼らにのみに見られる異常なことではなく、日本でも「間引き」などということが、現に行われていたことがあるようです。若い女性が出産し、その子供を養育していくことに親族などの協力が得られにくいことが予想される場合に子供を殺すこと、それは動物として本能的に持っていることなのでしょう。
最近の世の中で、ネグレクトを主体として児童の虐待が報道されますが、これは人間のもっている本能が出てきたものかもしれないと思いました。


(8)ライアンの代価 (1)〜(4)トム・クランシー  新潮新書

文庫本4冊の長編です。この筆者特有の切れのある場面展開で、一気に読んでしまいます。
パキスタンの核兵器を使いテロを行おうとするイスラム原理主義、ソ連の民族主義者、アメリカ国内では、テロに対する強硬派と、一見リベラルな人達やCIA,、FBIのドロドロとした権力争い、それらのものが複雑に絡み合って話は展開していきます。
この本を読んでいくと、現在グアンタナモ基地で行われているイスラムの捕虜尋問が正当なもののように思えてしまいます。決して許されるものではないのに、本の力と言うのは恐ろしいものだと思いますが、多くのアメリカ人は、当然のことと考えているのでしょう。
こんな国と同盟関係を結び、憲法を改悪し、国防軍を作り、集団的自衛権を行使すれば
私達の国がどのようになるか、簡単に想像できます。何故あのような人物達が、首相、副首相になって大きな顔をしているのでしょうか。


(9)同性愛の謎  竹内久美子  文春新書

 自分の遺伝子を残していくことが私達の究極の目的なら、生殖と言う行為に反する、同性愛と言うのが何故あるのでしょうか。
これは皆さんもご存知のように、古代ギリシャの時代から文献に残っています。 文献に残っているのがこれですから、当然もっと昔から存在していたのでしょう。その同性愛の存在理由を、遺伝子や過去の研究を紹介することで、明らかにしてくれます。
母親の身体の中に居るときの、脳の性ホルモンにたいする感受性、遺伝子で同性愛に関係すると考えられる部位の発見、兄弟の中でのその人の位置、それらのものに色々と関係してくるようです。
子孫を残すことに貢献しないものならば、当然その様な存在は残ってこなかったわけですが、それが少数なりとも残ってきた存在意義、それを興味深く紹介してくれています。


番外篇1  モンテ クリスト伯  宙組   宝塚大劇場

 「オーシャンズ11」と次の雪組新トップコンビお披露目公演「ベルサイユのばら」にはさまれて、言ってしまえばお財布休めの公演で、お客さんの入りも当日券情報などを見ていても、あまり良くないようでした。私も今回は色々と降って湧いた用事が多数あり、1回のしかもやっと時間を見つけて、直前に入場券を手に入れた観劇でした。
しかし、なかなか良くまとまった話で、好感を持ちました。今の宙組は、野球で言えば長距離バッターは居らず、何人かの中距離バッターと短打で稼ぐ、特徴のある選手の集まりのような組ですが、皆それぞれ特徴を出していました。
話自体も、一本ものにしてもよいような濃厚なものを、どうにか上手くまとめてありました。
ショウもいかにも宝塚と言ったもので、ヘビーな食事の間にあっさりとした和食を食べたような感じでした。


白 江 医 院 白江 淳郎

2013/04/10 2013年3月の読書ノート
(1)錯覚学  一川 誠  集英社新書

 一本の同じ長さの線分でも、その両端に書いた矢印の向きで、長さが違って見えます。又図形も長時間見続けると、揺れて見えることもあります。このようなものを一番上手に使用しているのは、最近では3Dの画面でしょう。
有効に働くこともあれば、何か不利になることもある錯覚ですが、この本はそのメカニズム、つまり脳内での画像処理の方法なども紹介してあります。
人類が進化してきて色々な能力を手に入れたのですが、その様に錯覚する能力は、何かしらそれを持っていれば有利なことがあるので、残ってきたはずです。又その錯覚を用いることで、私達の生活を良い物にしてきたはずです。その様な立場に立って、私達の知覚を解説してくれています。


(2)原発のコスト  大島堅一  岩波新書

 筆者は反原発の論者でもなく、純粋に経済上、一般常識上の原発の存在価値を論じています。目の前の電気料金がどうのこうの、と言う話はありますが、建設費又その建設前に地元を懐柔する為に使用するお金、使用後の核を処分するためのお金、福島原発のような大事故が起こった時に必要となる金額、その様なものを計算すると全く割に合わず、危険極まりないものであることなど、誰が考えても明らかです。
何十万人もの人が、何時故郷に帰れ、以前のような生活が出来るのか全くわからない状態が2年以上も続いているのに、原発を順次再開していくと、どんな顔をして言えるのでしょう。あの福島の人達に、面と向かって発言して欲しいと思います。そんなこと、普通の人間なら出来っこありません。
子供達のために国債を減らしていくべきだといって、増税する予定だそうですが、原発や核廃棄物をそれこそ何十億年も地中に埋めることは、子孫に対する負の遺産を残すことではないのですか。
大飯原発たったそれだけが稼動しているだけですが、電力不足は起こっていますか?大飯がなくても電力に不足はなかったはずです。再生可能エネルギーの活用、発送電分離、節電の工夫、その様な機器の改良など行えば十分対応できます。またあの無駄なライトアップなどどうにかなりませんか。
もう一つ怒りついでに、東京でオリンピックをして、一体何になるのでしょうか。東京の人が自分達のお金で、東京にオリンピックを誘致するのなら、それは勝手ですが、私達の税金を使って、そのようなことはしないで頂きたい。その様なもので、大震災の被害者が、元気になるはずがないでしょう。そんなお金があれば、住居の問題や多重債務の問題に使えば、東北の方に少しでも力になるはずです。
この本を読むにつけ、現在の原発村を作り上げ、何の反省もなくさらにそれを強固なものにして行こうとしている、自民党に腹立たしさを覚えます。


(3)わしらは怪しい雑魚釣り隊  椎名誠   新潮文庫

 原発について怒りまくったので、しばらくはアドレナリンを沈静化させるために、お気軽な本です。
言ってしまえば、椎名誠さんとその友人が、方々でキャンプをしながら魚釣りをする話ですが、その魚釣りには不文律があります。それは有名な高級魚を狙うのではなく、所謂雑魚を狙うと言うことです。
とは言いながら、時には高級魚が釣れる事があるのですが、それは目的が違うので非難されるとのことです。
いい年をした大人が繰り広げる珍道中と言うことで、気軽に読めます。
このシリーズ、後2冊読んでアドレナリンを補給します。


(4)わしらは怪しい雑魚釣り隊  マグロなんか釣れちゃった篇
(5)わしらは怪しい雑魚釣り隊  サバダバ サバダバ篇

 椎名誠さんのこのシリーズ、雑魚釣り隊は出世して船に乗りマグロを狙ったりアナゴを狙ったりします。又それに味を占め、ゴムボートを手に入れて海に出てつりを試みます。
趣味の陸釣りから、だんだんとグレードアップして行きますが、基本は素人が陸から雑魚を狙う、と言うことです。椎名さんの周囲にはとんでもない人達が集まり、それは楽しい時間を過ごすのですが、私の周囲にはこのような人はいないのであきれ返ったり、又羨ましく思ったりしました。


(6)アイルランド紀行  栩木伸明  中公新書

 時間的にも、体力的にも海外旅行はもう出来ないと思ってはいますが、一度行ってみたかった国は、アイルランドです。この本の副題にも書いてあるように「世界で言葉がもっとも濃い国」と言う印象がありますし、国の色がグリーンで私の好きな色でもあります。
イングランドに対する不屈の精神、ジョン レノンの祖先の国と言うこともあります。そうそうもうひとつ、一番大きなことはギネス ビールの故郷と言うことでした。
そのアイルランドの、ダブリンやベルファスト、アラン島などの様々な土地に纏わるエピソード、又筆者の体験談などを紹介してあります。旅行するなら是非一緒に持ち歩きたい本です。


(7)鉄道落語  古今亭駒次ら  交通新聞社新書

 東京、大阪の若手落語家で、鉄道大好きな4人が、ほぼ全部オリジナルの鉄道落語を紹介しています。
東京を舞台にし、色々な私鉄の名前が出てくるものは、地図がわからないので戸惑いますが、単に落語として訊けばそれなりに面白く感じます。大阪を舞台にしたものは、そういう戸惑いもなく、大阪弁の落語を聴く感じで、すんなりと面白く読めました。
列車に乗るのが好きな人、写真を取ることが好きな人、音が好きな人、いろんなマニアが居るようで、ディープな世界だと感心したり、気味が悪くなったりしました。


番外篇1  オーシャンズ11  花組  宝塚大劇場

 星組であったオーシャンズ11の再演です。花組バージョンで、星組に比べ大人っぽい雰囲気でした。なかなか良く練りこめたストーリーだと前回も感じたのですが、演出の仕方によって、大きく感じが変わります。
それにしても北翔海莉さんは凄い。私は2回観劇しましたが、その都度圧倒されました。


番外篇2  南太平洋  専科、星組  シアター・ドラマシティー

 オスカー ハマーシュタイン脚本・作詞、リチャード ロジャース作曲のコンビと言えば「サウンド オブ ミュージック」などで有名ですが、その代表作のひとつで、ブロードウェイで2000回近いロングランを記録した作品、それが「南太平洋」です。
1949年に初演された作品ですが、人種間の偏見に真正面に向き合った内容で、あの時代のアメリカでよくぞ上演できた、又多くの人に支持されたと驚いてしまいます。
舞台は第二次大戦中の、南太平洋のとある島です。其処に暮らすフランス出身の農場主エミールとアメリカ海軍の看護婦ネリー、派遣されてきたアメリカ海軍中尉のケーブルと現地人の娘リアットの二つの恋愛を軸に話は進んでいきます。主役は専科の轟悠さん。宝塚の正しい男役そのものの重厚な演技で、ぐいぐいと私達を引き込んでいきます。特に今回は、一列目の上手側の席が取れましたので、迫力もあり大感激でした。
私の母親も若かりし頃、この映画を見て感激したそうですが、素晴らしい作品でした。


白 江 医 院 白江 淳郎

2013/03/10 2013年2月の読書ノート
(1)川と国土の危機  高橋 裕  岩波新書

 最近はゲリラ豪雨や山崩れ、土砂災害などが頻繁に起こっているように感じられます。気候の変動もあるでしょうが、山林の荒廃、水田の減少など人工的な要因もそれに輪をかけているようです。
戦後治水事業として、全国各地にダムが作られ、それがあたかも自然災害に対する絶対的な守護神の様に思われてきましたが、そのダムが土砂が川に流れ、海に運ばれていくバリアーになっているため、海岸が逆に侵食され、白砂青松の海岸線がどんどんと失われていっています。
波の被害を防ぐため、巨大な防波堤を作ったり、多数のテトラポットを海岸線に設置していますが、そのようなものが、自然の力の前には無力であることは、東北大震災で明らかになりました。さらに私達は、その様な建造物の力を過信し、海岸近くのゼロメートル地帯に多くの人達が住んでいます。
河川工学が専門の筆者は、川の流域を、上流から海までを一つの自然の体形と考え、科学的な知識だけでなく、哲学なども動員して治水を考える必要を訴えています。
大和川の堤防のすぐ近くに住んでいる私にとって、示唆にとんだ本でした。


(2)荒天の武学  内田樹、光岡英稔  集英社新書

 今時代は不安定で、これから先この国がどのようになって行くか、全く予想がつきません。このような時代こそ、自分で自分を守り、律していくことが必要になってきます。
不意なことが起こったとき、瞬時に正解を出すことが武術の目的で、「想定外」と言うことは許されません。色々な武道がありますが、型から入って術を身につけていくだけでは、その道に通じているとは言えません。
内田樹さんは合気道7段の武道家としても知られていますが、対談の相手の光岡さんはハワイなどで修行を積んだ武道家で、ストリート ファイト等で実際に命のかかった争いを多数、経験してこられました。まさに実践に裏打ちされた、武道の達人です。
この本で指摘されているのが、最近の日本人の自分の命に対する危機の感じ方の鈍さです。どのように考えても、その発言内容や人格が信用できない人物に、これほど人気が出ることなど、信じられない世の中になって来ました。真っ当な世の中になるために、今必要なのは、武術の知恵でしょう。


(3)レジーム・チェンジ  中野剛志  NHK出版新書

 わが国は長年続くデフレ状態です。物の値段が安くなることは、こと購買という面では
よいことですが、経済、国家の状態としては異常なことです。
安部政権もインフレターゲット等と言っていますが、元々インフレ対策だった新自由主義を標榜しながら、その様な政策を行ったところで、大いに矛盾があります。ましてや消費税を増税するなどと言うのは、まさにデフレを悪化させることになります。
筆者は、過去20年間の誤った政策を見直し、公共事業を増やしたり、国債の発行を増やすことで、経済を活性化することを主張しています。まさにこれは、これまでのものとは逆転の発想ですが、20年間何の成果も出ず、貧富の格差を生み、社会を混乱させ、人間の尊厳を傷つけてきた政治を変換させる、良い機会かも知れません。


(4)危険な世界史  中野京子  角川文庫

 「怖い絵」の筆者が、色々な絵を題材にして、親子、兄弟など血族のドロドロとした関係を紹介しています。時代はフランス革命前後の50年、舞台はロシア、フランス、プロシア、イギリス、スペインなどの王家、芸術家などです。
一つの絵を題材にして、話が進んでいきますが一つについて10ページばかりで完結しますので、読みやすく楽しい本でした。
この筆者の本を読むたびに、実物の絵を見たいという感じになります。先日神戸で、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を見ましたが、実物の素晴らしさに引き込まれました。


(5)怖い絵  死と乙女篇  中野京子  角川文庫

 私のお気に入り、中野京子さんの「怖い絵」シリーズです。今回は「死と乙女」と言う言葉が副題として付いています。全部で22の絵画が紹介されていますが、その各々が印象的で、本物のその絵の前で長時間かけて時間を過ごしたいと思うものばかりです。
たとえば、ボティチェリの「ヴィーナスの誕生」この有名な、美しい作品の中にも筆者は人生の苦悩、儚さを見出し、それを紹介してくれます。そういう目で見れば、この作品もより一層深く感じることが出来ると思います。
美術展に行っても、混んでいる事もあって、じっくりと絵を見るわけに行きません。しかし絵画の背景を知って絵を見に行けば、その前から容易に立ち去ることはできないのだろうと思いました。


(6)おとなのための「オペラ」入門  中野京子  講談社+α文庫

 カルメン、椿姫、シンデレラ、これらの有名なオペラを紹介しながら、その魅力や愉しみ方を紹介しています。宝塚ファンの私ですが、本物のオペラは観た事がありません。ミュージカルとオペラはやはり違うものですが、音楽を楽しみ舞台を愉しむと言うことに違いはないと思います。この本を参考に、一度観て見たいと思います。


(7)この国は原発事故から何を学んだのか  小出裕章 幻冬舎ルネッサンス新書

 結論は皆さんもお考えのように、このような甚大な事故を人為的に起こしても、この国は何も学習していません。人間として、当たり前の心を持っているのなら、これまで自分達が行ってきたことをまず反省し、次世代を担う子供達に負の遺産を残さないように、努力することでしょう。
原子力発電の産業、、政策が無責任と、差別意識、それに大江健三郎さんが発言された「侮辱」を根底に発展してきたことは、最早隠し遂せるものではありません。しかし政府や産業界、マスコミはさまざまな手段を使って、隠蔽しようとしています。
3.11以来私達が学習した一番大きなものは、原発の怖さだけではなく、それを食い物にしてきた社会の矛盾体質です。今は調子に乗っている自民党ですが、すぐに馬脚を現すでしょうし、その次の受け皿も今は見当たりません。このようなときこそ、私達がしっかりとした歴史認識を持ち、子孫や世界に責任を持つ社会を作る必要があります。


(8)原発、いのち、日本人  浅田次郎ら  集英社新書

 3.11で明らかになったことは原発の怖さだけでなく、政治、資本家、大資本の経営者、マスコミが手を携えて、国民を侮辱し、搾取してきたことです。そのことを忘れた、あるいは気づかずにいる人も居るかもしれませんが、多くの国民は絶対に忘れないはずです。甲高い声の首相や、眉毛の長い肥満した経団連の老人は、これから又わが世の春を取り戻そうと思っているかもしれませんが、その様なことを許してはなりません。
現に原発は日本国内で一基しか動いていないのに、電力不足は起こっていません。この事実を、彼らはどう説明するのでしょうか。全く不誠実です。
総理大臣は、彼の祖父や父親がしてきたことをどのように国民に説明し、未来の子供達に責任を取るのでしょうか。まあ期待しても、無理でしょうが。
私達はどのような状況になっても、声を上げ続けなければならない、そのことに気づかされ、勇気をもらえる本でした。
大阪でも、関電前で毎週金曜日、デモは続いています。電力会社からのお金に薬漬けになったマスコミは報道しませんが、我々庶民は生きて、声を上げ続けていきましょう。


番外篇  ブラック.ジャック  雪組  シアター・ドラマシティ

手塚治虫さんのあの「ブラック.ジャック」です。主演は未涼亜希さんで、クールな雰囲気がブラック.ジャックにフィットしていました。
大劇場とは違い、舞台のせり上がりや、盆が回ることがありませんので、暗転と大道具などの差し替えで、場面が変わっていきます。このテンポもよく結構楽しめました。
ただ内容はもう一つよく響いてきませんでした。ただ未涼さんの印象だけが強く残りました。


白 江 医 院 白江 淳郎

2013/02/14 2013年1月の読書ノート
(1)卑弥呼は何を食べていたか  廣野 卓  岩波新書

 遺跡から出土する様々なものから、古代の食事は推察されていましたが、長屋王の邸宅後から発見された木簡から、より詳しい食事の内容がわかってきました。
奈良時代と縄文時代を一緒に話することはできませんが、昔の人は私達が想像するよりも多くの食材を使用し、様々に手の込んだ料理法を使っていたようです。ただこれは美味しく食べるという側面もありますが、どのように食材を腐らせず、美味しい状態で持たせるかということが、一番の目的でした。その為に、塩を使ったり、干物にしたり、燻製にしたり、醗酵させたりといった手段を用いたのです。
ただ時代が進み、社会の上下関係が確立してくると、食事の内容も大きく変わってきます。社会的地位の違い、住んでいる地域の違いなどで、食物の様子も変わってきます。この時代、文献に残っていない庶民の食事はわからないのですが、主食の米も十分には食べられず、他の雑穀と現在呼ばれているものを混ぜていたようです。
日本は海に囲まれ、海藻類や魚が豊富だったことも、食材が多岐にわたる理由でしょう。そういう意味で、古代からの自然の恵みに感謝しなければなりません。


(2)国の死に方  片山杜秀  新潮新書

 日本型の社会制度、政治形態は何度も解体されながら、歴史は進んできました。明治維新を経験して、天皇親政という言葉の本に、権力を集中させず分散させて、その各々で政治をしていく仕組みが出来ました。これは各々の分野で、専門的な仕事はできるでしょうが、大きな対極的な視野に立った仕事はできません。しかし各分野が力を競争することで、大きな勢力にはならず、支配する側としては好都合です。
国の中で政治をしている分には、これでよいでしょう。しかし、世界を相手にした政治、また大正時代の関東大震災のような、未曾有の危機に対してはこの組織では何も決定できず、実に無力です。
このような時にこそ必要な、リーダーの不在、それをカバーしなければならない官僚機構の硬直化、国民が持っている不安、不満に答えられない政府機構。このような物が相互に影響を及ぼして、日中戦争や太平洋戦争を引き起こしたり、自分で引き起こした戦争なのに終結することが出来なかったりしました。
この様な姿は、今回の東北の大震災や原発事故でも、また起こりました。そしてその反省もなく、原子炉の新設を言い出す政治家達。このようなことを許せば、また日本は死んでしまいます。
何故もっと普通の考えを持った、もう少し偏差値の高い大学を出た首相が出て来ないのでしょうか。


(3)進化を飛躍させる新しい主役  小原嘉明  岩波ジュニア新書

 ジュニア新書で、若い人たち向けに書かれた本ですが、大変詳しくまた面白い内容でした。
「モンシロチョウの雄がどのようにして雌を認識するか」ということを、筆者は研究し始めました。研究の結果、日本のモンシロチョウの場合、雌の翅の紫外色を目安に認識しているということが結論付けられました。しかし話はそれでは終わりませんでした。世界には多くの種類のモンシロチョウがいて、紫外色を翅に持たない種類も多くいたのです。
其処から筆者の世界を又にかけた研究が始まります。それにより、ヨーロッパを起源とする、モンシロチョウの進化や、分布の変化が明らかになってきます。話はそれでは終わりません。
一体種の進化のメカニズムとは、どういう機能から起こっているのか、従来考えられていたことを完全に塗り替えるような発想が、モンシロチョウの研究から導き出されました。先ほど書きましたが、ジュニア向けの本として著されてはいますが、オーバーな言い方をしたら、手に汗を握る話の展開です。
「理科離れ」などといわれますが、この本は理科系の研究の面白さを存分に教えてくれます。私は大学入試で、英語、国語、世界史、生物で点を稼いで入学した、文科系の医師ですが、その様な私の頭でも理科系の勉強の面白さを実感させてくれた、楽しい本でした。


(4)「橋下維新」は3年で終わる  川上和久  宝島社新書

 今日本は「政治不信」、「ニューリーダーに期待」、「話が違う、失望」という負のスパイラルに陥っています。筆者は、歴史上の大衆に支持されてきた指導者、カエサル、ナポレオン、ヒトラーを参考に、現代日本の政治を考察しています。
ただ筆者は、「橋下維新」を時代を改革する力だと評価していますが、それは違うだろうと感じてしまいます。彼がよって立つ所は、要するに市場経済主義ですし、石原と組んだ所で旧い右翼思想がそれに加味されました。この本の副題に「民衆に消費される政治家」という言葉がありますが、橋下はまさにその様な時代に咲いた、またはその様な時代の波に上手く乗ろうとした、仇花だと私は思っています。
このような政治家は、数年で賞味期限が来て腐っていけばよいと思いますし、それを見抜けないようなら、日本ももう終わりです。平成の天一坊だということに、何故皆は気づかないのでしょう。
桜宮高校の事件があり、これを良い材料にして又彼のパフォーマンスが始まるでしょう。まだ大阪府民は、彼の姿に拍手を送るのでしょうか。


(5)アメリカが劣化した本当の理由  コリン ジョーンズ  新潮新書

 私達は自由と民主主義の国」という風にアメリカのことを思っている反面、銃の規制も出来ず、アフリカ系の人たちをはじめとする人種差別があったりすることから、どのようにこの国をとらえてよいのか、戸惑う所があります。
又政治の面においても、産業界が大きな発言力を持ち、結局は産軍共同体の中で多くのことが決定されていくのを、私達はこれまで何回も見て来ました。オバマが大統領になって、何か大きな「チェンジ」が起こるのかと期待しましたが、期待外れに終わったものが沢山あります。
この本は、一体アメリカの政治や、憲法や、民主主義の根本はどこにあるのかということを、結構判りやすく解説してくれています。これを読むと、私達の持っている、あるいは持たそうと仕向けられてきたアメリカのプラスのイメージよりは、やはりマイナスの面が多いように思いました。この国に日本の政治家が期待するのは、武力による日本周辺への威嚇、ということだけではないかとふと思ってしまいました。


(6)暴走する地方自治  田村 秀  ちくま新書

 ちょうどこの本を読んでいるとき、大阪市立桜宮高校の事件が報道されました。どうせ橋下はこれを材料に、色々とパフォーマンスをするだろうなと思っていましたが、実際予想通りのことが起こりました。つい先日まで体罰を容認していた当の人物が、責めやすい相手を見つけると掌を返して入試中止などと口走り、財政の締め付けを口にして脅しをかけ、自分の思い通りに事を運びました。
日本の総理大臣なら、衆議院、参議院の議論を経て政策を決定していかなければなりませんが、維新の会が過半数を占める大阪ならば、何事も橋下の言うことのイエスマンだけです。大統領より大きな権限を持っているのです。しかしやっていることは、いじめと同じレベルの、低次元な下品なことです。本当に恐ろしいことです。
石原、橋下、東国原、河村、これらの知事は一体何をしてきたのでしょうか。又彼らを支持した人たちは何を期待したのでしょうか。いつも言っていることですが、彼らが政治を行って一番最初に差別される、あるいは切り捨てられる人たちが、熱狂的に彼らを支持しているのです。何故このような明白な事実に気づかないのでしょうか。それが日本人のインテリジェンスの低さでしょうが。
この本は、その様な知事が行っている政治の危うさを的確に指摘しています。大阪府民、大阪市民もいくらなんでも、橋下、松井の胡散臭さに気づかなければならないでしょう。


(7)日本型リーダーはなぜ失敗するのか  半島一利  文春新書

 近代日本で有名なリーダーというと、日露戦争の東郷平八郎、大山巌が思い出されます。作戦などの最後の押さえなければならない所は自分で決断するが、それ以外のところは、信頼できる能力を認めた部下に自由に働かせる。又何かあれば最終的な責任は、自分がとる。そういったポリシーを持った人という、印象があります。又その様な人が長にふさわしいと考えられ、軍隊では、その様な教育がなされてきました。
ただ当初はそれでよかったのですが、その形式のみが受け継がれてきてしまったため、太平洋戦争ではその職にふさわしくない、人格や能力に欠ける人がリーダーとなり、戦争を誤った方向に導き、不幸をもたらしました。
日本人は過去の出来事を教訓にして、未来を考えるということをしないので(あるいは潜在意識のレベルでそれを回避するので)現在の社会のリーダーもその様な人たちが多くいます。
筆者は、「決断できない、現場を知らない、責任を取らない」という風に言っていますが、原発事故に対する、自民党、東京電力、民主党、それぞれの姿勢にこれらの要素が、多かれ少なかれ見て取れます。
半藤さんは、このような話を講演会でして来られ、大反響があるとのことですが、聴衆はその様なリーダーを、人事だと思って聞いていたのでしょう。


(8)戦国坊主列伝  榎本 秋  幻冬舎新書

 戦国時代といえば、多くの大名やその家来のことを思い起こしますが、彼らのブレーンとして働いたのはお坊さんです。あの時代、学問の中心といえばお寺で、有名なお寺には全国から優秀な人物が集まっていました。彼らは仏教の勉強だけでなく、漢学や医学にも通じていましたので、それらの知識が戦国大名の政治や、よその国との交渉事に大いに役立ったのです。
この本では戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した、31人のお坊さんを紹介してあります。彼らがそれぞれの得意分野で活動していくにつれ、時の権力者に重宝され、地位が上がっていく様子などが面白く書かれています。
本の題が題ですので、どのようなものかと思いながら読みましたが、コンパクトにまとめられ、読みやすい本でした。


(9)大便通  辧野義巳  幻冬舎新書

 人間は一生に8.8トンの便をするそうです。こう訊いただけでも、実感がわかないというか、びっくりするというか。しかし排便は毎日することですし、私達が健康な生活を送る上で、非常に大事なものであることは言うまでもありません。
元々獣医師志望だった筆者は、ひょんなきっかけで腸内細菌を研究する手伝いをすることになります。腸内細菌を集めるためには、当然便を集めなければならず、其処から筆者と便の付き合いが始まります。
私も一応医師の端くれですので、(ちょっと見栄を張って)知っていることが殆どだったのですが(良かった)排便についてよくまとまった本でした。
是非ご一読を。


(10)官僚の反逆  中野剛史  幻冬舎新書

 公務員制度を改革、または破壊しようとして行政改革が声高に叫ばれています。又そのスピードが遅くなれば、あるいは目指している方向が少し変わってくれば、マスコミや国民は大きな非難の声を上げます。
古賀茂明さんなどは、その当時官僚でありながら改革派のリーダーのような存在です。彼の意見には納得できる所もないではないのですが、しかし彼は元々が小泉改革の目指していた、新自由主義路線を完成させる為に頑張ってきた人ではなかったのかと思ってしまいます。あれ、あの改革なんて、否定されたものではなかったのでは、と思いますが皆さんいかがですか。
「経済に対する政治の介入をできるだけ排除する、そうすれば経済の持つ自律性により、市場はより健全なものになっていく。」その様に唱えられ、追究して行った結果市場経済主義は、破綻していきました。市場経済主義では、政治の介入を出来るだけ排除するわけですから、政治と対立する役割としての官僚の力が、相対的に強くなってきます。
筆者によると、政治家や利害関係者との調整役である官僚が、本来の立場から大きく変貌し、外圧を使ってでも日本を変えようとするような意識状態になっているようです。もう一度ここで考え直して、ケインズの言う経済に戻していくことが、必要なのではないかと思います。


(11)「独裁」入門  香山リカ  集英社新書

 橋下などという人物が、何故このように期待され、人気があるのでしょう。全く不思議です。少なくとも中学、高校時代にあのような同級生がいたら、誰も相手にしなかったでしょう。山中伸哉、辰巳卓郎、ロザン、福島原発元所長の吉田昌男などの出身校であるわが母校では絶対にそうだと思います。
訳の判らない、それこそ何かに酔いしれているようなこの社会の雰囲気を、分り易く分析してくれています。実に分り易く、現在の国民、特に自分では認めていないでしょうが、大多数の虐げられた人たちの心理を、解説してくれています。ヒトラーやムッソリーニ、はたまたスターリンも、その当時はその国の多くの人達に熱狂的に支持されていた事実を忘れてはいけないでしょう。


番外篇  ベルサイユのばら  月組  宝塚大劇場

 私は宝塚ファンですが、「ベルばら」はあまり得意では有りません。何か話の設定についていけないのです。
今回はアンドレ役が、月組準トップの明日海りお、花組トップの蘭寿とむ、雪組新トップの壮一帆の役替わりということで話題でしたが、それもどうかなという気持ちでした。そうは言うものの、元旦公演に抽選が当たったので、喜んで観劇しました。この日のアンドレ役は明日海りおさんでした。もう一日観劇した時は、壮一帆さんが演じておられました。
明日海さんは初日と言うこともあり、もう一つ役にはまり込んでいない感じがしました。それに反して、壮さんはこれまでこの役を演じたことがある(はず)ので、実にしっくりとした演技でした。 
話の設定はともかく、舞台の華やかさを見れば、これぞ宝塚と言った作品です。まあ以前花組でした「ベルばら」よりは出来は良かったと思いました。


白 江 医 院 白江 淳郎


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